検査結果の見方

 検査結果の見方についてお話しします。

 

この春は健康診断について集中的にお話ししてきました。幼少期の犬猫でも遺伝性疾患を知る機会になること、青年期から中年期は生活習慣を見直す機会になること、高齢期から老齢期は慢性疾患を早く知り早期に治療に入ることができることなどから、健康診断はすべての年齢の犬猫たちの健康を守るのに必要なことだと思います。

 

で、受けていただいた検査からどのようなことを知ることができるのかをお伝えします。検査結果の付票にも記してありますが、箇条書きではわかりにくい点もあるかもしれないので、あらためて記述です。

IMGP0041.jpg
簡単な検査は赤血球や白血球、血小板の
数をカウントするだけですが、
さらにくわしく見ていくこともあります。

 <血球の検査>

血液細胞には赤血球、白血球、血小板があります。

貧血や炎症、感染などの有無を知ることができます。

①赤血球の検査

・赤血球の数(RBC

・ヘモグロビン濃度(Hb

・ヘマトクリット(Ht、HCT

・平均赤血球容積(MCV) 

・平均赤血球ヘモグロビン量(MCH

・平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC

・網状赤血球数(RET

*これらは貧血や赤血球増加症などを示す指標になるものです。

*高いとき:脱水、心臓の病気、赤血球増加症などの病気が疑われます。

*低いとき:貧血です。しかしこの検査から貧血の原因を探ることはできません。

*網赤血球は未成熟の赤血球で、高ければ骨髄で再生していることを示します。

②白血球の検査

・白血球数(WBC

*白血球は炎症性疾患などを示す指標になるものです。炎症や感染などで増減します。白血球はさらに5つの分類があります。血液を薄くのばして染色したスライドを作成します。そしてそのスライドを顕微鏡で観察すると、白血球を観察することができます。5種類のうちのどの白血球が増えて(減って)いるのかを知ることができるわけです。

*好中球(Neu)は運動やストレス、炎症で増加します。コルチコステロイドなどの薬の影響でも増加します。ウィルス感染や激しい細菌感染では減少します。

*リンパ球(Lym)は慢性炎症や白血病の時に増加し、ストレスで低値に出ます。

*好酸球(Eos)はアレルギーや寄生虫、腫瘍のときに高値になります。

*単球(Mon)は慢性炎症で高値になります。

*好塩基球(Bas)は慢性炎症の時などで高値になります。

③血小板の検査

・血小板数(PLT

*血小板数は出血性疾患などを示す指標になるものです。急性出血や血小板再生反応があるときに高くなり、慢性の出血で低くなります。免疫介在性血小板減少症など、特定の病気の存在を知る手立てになります。

*出血性の疾患や血管内凝固が疑われるときには全く別の凝固系検査を実施することがあります。

 IMGP0042.jpg
いわゆる生化学検査は、系統別に判断していきます。
同じ検査項目でも複数の組織にまたがって影響しています。


<血液生化学検査>

血液の生化学検査は数値から身体のどこの器官に問題があるのかを検出することを目的にしています。複数の項目を総合的に見て判断していきます。

項目それぞれについての解説ではなく、身体の器官別に、どのような項目で判断していくのかお話ししていこうと思います。今春から、検査項目を増やし、ワクチン時の検査を一部有料にさせていただいておりますが、検査項目が少ないと、少しの臓器のことしか判断ができませんし、異常を見逃すことにもなるのを分かっていただけるとうれしいです。

①蛋白の検査

・総蛋白(TP

・アルブミン(ALB

・グロブリン(GLB

・アルブミン/グロブリン比(A/G

*総蛋白は血液中の蛋白質の総量です。栄養状態や肝機能、腎機能、免疫機能の指標になります。アルブミンの上昇は脱水、低下は肝臓や腎臓、腸などの病気や出血などが疑われます。グロブリンの上昇は脱水のほか、慢性の炎症、腫瘍を心配します。

②肝臓の検査

・アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT

*肝細胞に含まれている酵素です。肝機能の指標に使われます。肝細胞が腫大したり壊死したりすると高値になります。

*肝疾患の追加検査として総胆汁酸(TBA)やアンモニア(NH3)を実施することがあります。肝臓外、肝臓内の血管系異常があると高値になります。

③胆道系の検査

・アルカリフォスファターゼ(ALP

・γグルタミルトランスペプチターゼ(GGT

・総ビリルビン(TBil

・総コレステロール(TCho

*胆道系の疾患の指標になるこれらの検査値は胆汁のうっ滞や胆管炎があると上昇します。

*ビリルビンはヘモグロビンの代謝産物で、溶血や肝傷害、排泄路の閉塞などで上昇します。黄疸を見る検査です。

*アルカリフォスファターゼは骨の成長期(子犬など)、ステロイドなどの薬の影響、腫瘍でも上昇します。

IMGP0044.jpg
春の健康診断、受けてみませんか。

④肝不全の検査

・アルブミン(ALB

・総コレステロール(TCho

・血糖グルコース(Glu

・尿素窒素(BUN

*肝疾患が進み、肝不全になると、アルブミンの合成ができなくなるので低値になります。さまざまな代謝がうまくいかず、血糖値や尿素窒素も低下します。この頃には肝酵素の主体となっているアラニンアミノトランスフェラーゼの上昇はなくなります。

⑤腎臓の検査

・アルブミン(ALB

・尿素窒素(BUN

・クレアチニン(CRe

・リン(IP

・カルシウム(Ca

・電解質(Na,K,Cl

・尿素窒素クレアチニン比(BUN/Cre

・対称性ジメチルアルギニン(SDMA

*尿素窒素は腎臓から排泄される窒素代謝物です。腎機能が低下したり出血があると上昇します。クレアチニンも腎機能の低下で上昇します。尿素窒素とクレアチニンの比は二つの数値から算出するものですが、腎疾患ではなく、脱水のために見せかけの高値になってはいないかを判断するのに用いられます。リンとカルシウムは骨の代謝に関係するミネラルです。腎疾患では腎性二次性上皮小体機能亢進症から骨が脆弱になることが多く、リンは高値を示します。腎疾患ではナトリウム、カリウム、クロールなどの電解質の変動を起こすこともあります。対称性ジメチルアルギニンは新しい腎機能マーカーです。早期の腎疾患の発見が可能になりました。

*ネフローゼ症候群があるとアルブミンや総コレステロールに異常が現れます。追加検査として尿検査が必須になります。

⑥膵炎の検査

・アルブミン(ALB

・アミラーゼ(Amy

・リパーゼ(Lip

・尿素窒素(BUN

・クレアチニン(Cre

・カルシウム(Ca

*アミラーゼやリパーゼは膵臓から分泌される消化酵素です。膵炎の指標として使われます。そのほかの検査項目も総合的な判断材料になります。

*膵炎が疑われるときの追加検査として、c反応性蛋白(CRP)や膵特異的リパーゼ(犬:SpecPLi、猫:SpecfPLi)、犬トリプシン様反応物質(TLI)を実施することがあります。

IMGP0045.jpg
猫ちゃんだって、健康診断を。

⑦糖尿病の検査

・グルコース(GLu

*血糖値は糖尿病で上昇、低血糖症で低下します。食事に影響を受けるので空腹時に検査をするのが望ましいです。またストレスやステロイドホルモンの影響によっても上昇します。

*糖尿病が疑われる場合は、糖化アルブミン(GA)や尿検査が追加検査になります。

*血糖値が低いとき、子犬の低血糖症や成犬の膵臓腫瘍が心配です。

⑧副腎をみる検査

・アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT

・アルカリフォスファターゼ(ALP

・γグルタミルトランスペプチターゼ(GGT

・総ビリルビン(TBil

・総コレステロール(TCho

・血糖グルコース(Glu

*これらの上昇は副腎皮質機能亢進症を疑わせます。

・グルコース(GLU

・尿素窒素(BUN

・クレアチニン(CRe

・電解質(Na,K,Cl

・尿素窒素クレアチニン比(BUN/Cre

*これらは副腎皮質機能低下症を総合的に判断するときに用います。

*副腎の病気が疑われるとき、追加検査としてコルチゾール値を調べます。特殊な検査方法を採ることがあります。

⑨甲状腺をみる検査

・総コレステロール(Tcho

・アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT

・アルカリフォスファターゼ(ALP

*犬では総コレステロールの上昇で甲状腺機能低下症が、猫ではアラニンアミノトランスフェラーゼやアルカリフォスファターゼの上昇で甲状腺機能亢進症を疑うことがあります。(血液検査結果からだけでなく、生体の方からも総合判断して疑いが出てくるものです)血清総サイロキシン(T4)や遊離サイロキシン(FT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の(猫ではおもにT4のみ)追加検査が必要になります。

 IMGP0043.jpg
血液検査だけで無く、尿検査や画像検査なども見て
総合的に判断しないと分からない病気もあります。


<おわりに>

同じ検査項目が何度も出てきていることにお気づきのことかと思います。一つの検査項目が高いまたは低いということで一つの病気を疑うわけではありません。すべて総合判断で、さらに身体をよく知るためにはそこから追加検査等も必要になってきます。検査結果の解釈は実はとても難しいものなのです。

臨床検査から謎解きのように病気の本丸に入っていく学問は「臨床病理」といってひとつの独立した分野になっています。すべてを総合的に理解していると、からだが発信している情報をクロスワードパズルのように当てはめ、病気を探り出すことができます。非常に理論的で奥の深い分野です。

きょうのお話しはここまでです。

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード