尿検査とその結果の見方

 今日は尿検査についてお話しします。

もう、ずーっと健康診断がらみのお話しばっかり続けております。尿検査を受ける方は少ないかもしれませんが、これでなかなか、いろいろなことが分かるので、腎臓病関連で心配される方は、いえ、そうではない方もぜひ受けていただきたい検査です。

 body_jinzou_good.png
オシッコのもとは血液。腎臓で血液から尿ができます。

<尿のもとは血液です>

心臓から送り出された血液は、全身を巡りながら酸素や栄養素を各組織に運び、そこから二酸化炭素や老廃物を受け取り、各臓器で処理され再び心臓に戻ってきます。腎臓では血液を濾過し、身体に不要なものを尿として排泄していきます。

 

<尿が作られます>

血液を濾過しているのは腎臓の「糸球体」です。名前の通り、毛糸玉のように細い血管がぐるぐる巻き付いた球形のところが糸球体です。血液を濾過するフィルターになっていて、ここを血液が通過するときに「原尿」と呼ばれる尿の大元が漉されて出てきます。糸球体はネフロン1つに1つあります。ネフロンは30万個から40万個が腎臓に備わっています。糸球体からは「尿細管」がつながっています。こちらも名前の通り細い管状の構造物です。全部が漉しとられた原尿から、もう一度からだに必要なものを尿細管が選び出して体内に再吸収される仕組みになっています。そして最終的に「尿」ができ、尿は尿細管から集合管を経て腎盂(じんう)に集まり尿管から膀胱へと出て行きます。膀胱である程度尿がためられると「尿意」をもよおして排尿することになります。

 

<尿からのサイン>

尿中のほとんどの成分は血液に由来しています。尿の変化は身体の状態を反映しています。尿の成分だけでなく、尿量そのものも身体の変化に対応して増えたり減ったりしています。腎臓に傷害があり、急な腎機能低下が起こると、尿がほとんど作られなくなる「乏尿」や全く作られない「無尿」ということになることもあります。糖尿病や腎臓のホルモン異常があると「多尿」になります。猫によく見られる慢性腎臓病では尿の濃さが低い尿を大量に出す「多尿」になることがよく知られています。腎臓のネフロンはフィルターの役割をする「糸球体」の部分と、再吸収を行う「尿細管」の2つの機能の構造体からできています。単に腎臓が悪いといっても、そのどちらの方の機能が悪くなっているのかは尿検査を通しておおよその見当がついてきます。

 nyoukensa.png
自然尿を採取して持ってきてくださる時は
新鮮なものをお願いします。


<尿を採る>

採尿にはいくつかの方法があります。それによって検査結果に影響を与えることがあります。採尿方法も検査結果を判断する材料になります。また検査目的によっては好ましくない採取方法もあります。健康診断のためのスクリーニング検査でしたら、自然採取尿で十分です。

・自然採尿:普通に排泄された尿を紙コップなどでキャッチします。

・カテーテル採尿:尿道口から膀胱へ管を通してポンプで尿を吸引します。

・穿刺採尿:超音波検査をしながら膀胱に針を刺し、ポンプで吸引します。

*自然尿の場合は、ご家庭で排尿時に尿キャッチして持ってきてもらいます。未使用の紙コップやトレーで受けてください。それから試験管に移し替え、しっかりと栓をしてください。時間の経過とともに結果が左右されますから、できれば30分以内のうちに病院に持ち込んでください。それ以上時間が経ってしまうときは冷蔵庫で保存して24時間以内に持ってきてください。

*病院では穿刺尿を用いて検査することが多いです。尿道に閉塞がないかを知るためにカテーテルを通して採尿することもあります。病院に連れて来られたときに膀胱内に尿が貯留していないと採尿ができません。後日あらためて尿検査に来てもらうこともあります。

 

<尿検査の手順>

尿検査といっても一連の検査をすべて実施するのに、いろいろな行程があります。

最初に色調や濁りなどを肉眼的に観察します。ニオイも判断材料です。それから尿試験紙(ウロスティック)を尿に浸して化学的な性状を調べます。尿比重はスティック検査にも含まれていますが、正確ではないため、比重計で特別に調べます。尿をスピッツに入れて遠心分離したあと、沈殿物(尿沈渣)をスライドに載せて、そのまま、そして染色したものの2つを作成し、顕微鏡で観察します。

 

<肉眼的な観察>

尿の外観、色と濁りを目で見て判断します。ミネラル成分が出てきたり、膀胱炎があって尿中に細胞成分や細菌が出現しているときは尿が濁ってきます。血液が混じるなどすると尿の色が変わります。

IMGP0046.jpg
いわゆるスティック検査は尿の化学的検査です。
 

<化学的な尿性状の検査>

試験紙の種類にもよりますが、尿性状の検査では尿pHとタンパク、糖、ケトン体、潜血、ビリルビン、ウロビリノーゲンなどの尿中濃度を調べることができます。大まかな段階で表示されます。決まった数値は出されません。

①尿pH

 5から9までの5段階で評価されます。機械を通すと中間点を0.5刻みで表示します。

正常では5.5から7.5くらいです。

食事の内容に大きく影響を受けます。pH7.0が中性で、それよりも低いのは酸性尿、高いのはアルカリ尿になります。ウレアーゼ産生菌に感染した場合はアルカリ尿になります。アルカリ尿ではストルバイト結石を形成しやすくなります。酸性尿ではアシドーシスがあるかもしれません。

②タンパク

 (-)から(+-)、(+)~(4+)まで6段階で評価されます。

正常では(-)から(+)の3段階までで、数値で概算すると30mg/dl以下に相当します。

濃縮された尿では尿路から分泌される蛋白成分が(+)くらいは検出される可能性があります。尿路の感染や出血、精子の混入で簡単に(+)になります。

尿比重が低いのにタンパクが出ているのは腎疾患が心配になります。比重や沈渣とともに評価します。多くのタンパクが出現している場合には、タンパククレアチニン比(UPC)を追加検査します。腎機能をさらに詳しくみることができます。

③糖

 (-)から(+-)、(+)~(4+)まで6段階で評価されます。

正常では(-)です。糖尿病のように高血糖状態が持続している(犬で180mg/dl以上、猫で250mg/dl以上)と、尿細管で行われる糖の再吸収の能力を超えてしまい、尿糖は(+)になります。

高血糖ではないのに尿糖だけ(+)に出る場合があります。腎臓の再吸収能の異常で、ファンコニー症候群が疑われます。血糖値とともに評価します。

④ケトン体

 (-)から(+-)、(+)~(4+)まで6段階で評価されます。

 正常では(-)です。

 絶食や糖尿病のときにグルコースの利用ができず、体脂肪が分解され、肝臓でケトン体を作っていると尿中にケトン体が出現します。

 糖尿病性ケトアシドーシスのときなどに見られます。

⑤潜血

 (-)から(+-)、(+)~(3+)までの5段階で評価されます。

正常では(-)です。

膀胱炎や腫瘍などで尿路に出血があると赤血球に反応し(+)になります。

尿中のヘモグロビンやミオグロビンも検出します。身体の中で溶血が起こり、ヘモグロビン尿になっても(+)になりますし、筋肉の損傷があってミオグロビン尿になっても(+)になります。

赤血球のために潜血(+)なのか溶血のために(+)になっているのかの判断は尿沈渣で確認する必要があります。

⑥ビリルビン

 (-)から(4+)までの5段階で評価されます。(+-)はありません。

正常では(-)です。

 血中のビリルビン濃度が高いと尿中にもビリルビンが排泄されます。黄疸の指標になります。高いのは肝胆道系の病気が疑われます。

 犬の場合、濃縮尿では正常でもビリルビンは尿から排泄されます。濃い尿での(+)は心配がありません。

 猫では尿の濃さに関係なく(+)は異常です。

⑦ウロビリノーゲン

 (-)から(4+)までの5段階で評価されます。(+-)はありません。

 臨床的な意味は少ないといわれています。

 

<尿比重の検査>

 水を1としたときの尿の重量比が尿比重です。動物の水和状態によって数値は変動します。1回だけの評価では正確ではないため、日をあらため、繰り返し2回から3回くらい測定します。

 夜間はあまり水を飲まないため、朝一番の尿で尿比重を測定し、腎臓の尿濃縮能を評価するのがもっとも良い測定になると思います。

 ふつう犬は(1.0151.045)の間になり、猫では(1.015~1.060)の間になります。

 腎機能が正常に働いていると、濃縮された尿は犬で1.030以上、猫で1.035以上になります。

 1.007よりも低いのは低張尿で、ごく薄い濃度です。

1.008~1.012の間にあるものは等張尿で、腎臓は尿を濃くすることも薄くすることもできないと判断されます。

20160626232121.png
尿沈渣は顕微鏡で観察します。
 

<尿沈渣の検査>

尿を高速で回転させると、上澄みと沈殿物とに分かれます。沈殿物を顕微鏡で観察するのが尿沈渣の検査です。尿沈渣では細胞成分、結晶成分、尿円柱、微生物、その他が観察されます。

①細胞成分

 赤血球や白血球、上皮細胞を観察します。正常では赤血球はほとんど観察されませんし、白血球の存在は炎症が疑われます。細胞成分の種類や量によって異常のある部位や原因を推定することができます。

②結晶成分

 それぞれの結晶はその形態から判断ができます。結石としてはストルバイトやシュウ酸カルシウムがほとんどを占めるのですが、結晶のできそこないともいえるリン酸塩や尿酸塩も多く見られます。

 特定の病気の時に出現する結晶もあります。肝疾患では尿酸アンモニウム結晶、高ビリルビン血症ではビリルビン結晶などです。

③尿円柱

 尿円柱は尿細管の中で円筒形に作られます。タンパクと細胞成分からできています。腎臓病では多くの尿円柱が出現してきます。正常でもみられるものから腎障害があると出てくるものなどさまざまです。

④微生物

 細菌や真菌、寄生虫を観察することがあります。

 細菌は形状から球菌なのか桿菌なのか判断します。尿路の感染を意味するものなので、培養検査、抗菌薬の感受性検査など追加検査を行うことが多いです。

⑤そのほかの成分

 油滴や精子のほかトイレ砂や花粉なども混じって見えることがあります。これらは生理的なものです。

 DSC_9704.jpg
直接見たものです。
ストルバイトの結晶が見られます。
バックに写っている小さな点々は赤血球です。



DSC00740_20170331175525318.jpg
染めた標本です。
細菌がいるのが分かります。


<おわりに>

健康診断のスクリーニング検査であれば、尿検査は外観検査、スティック検査、比重の検査だけでも十分で、それだけでも欲しい情報は得られます。そうなると自然尿を用いた検査で可能ですから、動物は痛くも痒くも無く検査を受けられます。犬では散歩で排尿をするならば紙コップ持参で出かければ採取できますし、猫の場合もトイレ砂を非吸収性のものにして受け皿にペットシーツを敷かなければ採尿できます。飼い主さんの少しの工夫と、やる気さえあれば、動物は病院での採尿の苦痛を受けずに尿検査だけ受けることが可能です。

一度採尿に挑戦してみてはいかがでしょうか。詳しくはスタッフがお伝えします。

スポンサーサイト

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
ブログランキング
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード