- 2017-06-18 :
- 猫の毛球症
猫の毛球症
ハートニュースでも紹介しました猫の毛球症について、もう少し詳しくお話ししようかな、と思いました。
今日は猫のヘアボールとか毛球症についてお話しします。
<猫はよく吐く>
猫は健康でも吐くことがある動物です。「胃がむかむかしていると草を食べて吐き出すんだよね」と考えていらっしゃる飼い主さん、あながち間違いでもないかな、と思います。たぶん、ネズミとか小鳥とかがぶがぶがぶっと食べて、消化できない被毛や羽をあとからゲホッと出していた野生の頃の名残なんじゃないのかな、とも思っています。草を食べるのは、上手く出せないときに草の葉を食べて胃内に刺激を追加させて一気に嘔吐に持ち込もうという作戦もあるのかもしれません。
今は外でハンティングのできる好環境で飼育されている猫さんは減っているし、家庭内では工場で作られたドライフードを食べている猫が大半だし、たまにおやつでウェットフードや人の食べ物を貰っていたとしても、食べかすが出るようなものはないので、こんな催吐のために草を食べる必要もないだろうと思います。それでも、古くからのDNAが猫を草好きにしているようです
たしかに猫は時々嘔吐します。そして吐物を確認したら、自分の毛だった、ということはよくあります。そうすると、胃の中で悪さをしていて、嘔吐を誘ったのは毛球ということになります。ウンチだと思ったら、そのほとんどがウンチのかたちに形成されたフェルトだったというのも経験したことがある飼い主さんは多いかと思います。途中で詰まらず通過して良かったよね。
<毛球ができる>
そもそも猫はきれい好きで、また自分の身体を自分のニオイにして安心していたいから、よく身繕いをします。舐め舐めする猫の舌はざらざらで、よく見るととがった突起が出ているので、身繕いのときに毛がよく抜けます。解剖学的構造上、身繕いすると毛が抜けやすいのです。
そこへ来て、皮膚病から来る痒みのために身繕いがさかんになると、舐め行動により、明らかな脱毛になるほど猫は舐め続けます。場合によっては心因性の病気のために、舐め続け、その行為を止められないこともあります。アレルギー性皮膚炎、ノミなどの外部寄生虫疾患、皮膚真菌症などの感染症、不安やストレスなどは飼い主さんがいち早く気づいて、治療を始めてやらないといけません。
さらに、胃腸の動きが悪くなるような病気、慢性の胃腸炎、高齢猫に多い腸管のリンパ腫などがあると、できた毛球が自然に出せないため、単なる毛球症も外科的な治療をしないと解決できないような病態になってしまうこともあります。
<毛球症の予防策>
猫が身繕いをしても毛が抜けないようにするには、日常のケアで抜けやすい毛を飼い主さんがこまめにブラシングして抜いておくのがよい方法です。
市販の商品に「毛玉を考慮したサプリメント」や「毛玉ケアのフード」があります。これを与えたり食べさせたりしていればおなかの中で毛玉が溶けてなくなってしまうから安心だと思っていらっしゃる飼い主さんがおられます。これらの商品は毛玉の流れをよくして、胃から腸へ、腸からウンチとしてするっと出ることを目的にした商品です。食物繊維やワセリン、流動パラフィンなどが排泄を促進する効果を狙った物質で、これらにより管理できるように狙っています。溶かすことはできません。
<やっぱり病的な嘔吐なんじゃないのか?>
頻繁に嘔吐するようであれば、生理的な嘔吐というよりは、別の病気が隠れているのかもしれないと疑って検査を受けるのが安心につながります。
身繕いがさかんになる皮膚病や、心因性の病気はないのか、そして胃腸等の消化器の病気で吐くことは想像にたやすいわけですが、そのほかにも腎臓病や肝臓病で嘔吐を誘う物質が体内で増加しているようなことはないのか、リンパ腫をはじめとした腹腔内の腫瘍性疾患は大丈夫なのか、というように、嘔吐をさかんにさせる病気はあれこれ考えられるので、嘔吐の頻度が増してきていたり、体重が減ってきていたりする場合は、一つ踏み込んで病気の疑いをかけた方がよいこともあります。
毛球症についてのお話し、今日はこれでおしまいです。