SFTS感染症

 先々週、お世話していた野良猫に噛まれた女性がSFTS感染により亡くなっていた、というショッキングなニュースが報道されました。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG24H7H_U7A720C1CR8000/

同日、獣医師会からも、SFTSウィルスに感染した猫の事例が発生しているとのお知らせも入ってきました。外来でもにわかにSFTS感染症についての話題が増えています。

 

SFTS

SFTSというのは「重症熱性血小板減少症候群」のことです。「severe fever with thrombocytopenia syndrome」の頭文字4つをとって 省略した名称です。

 

<マダニから感染>

SFTSは、SFTSウィルスを保有したマダニに咬まれて感染します。

マダニは家の中に発生するイエダニ、植物にいるハダニなどとは全く違うダニです。

 

<マダニのいるところ>

以前、マダニはシカやイノシシなどの野生動物が生息する山中に生息すると考えられていました。しかし民家の裏山でも見られますし、田畑のあぜ道や公園、川縁の草深いところでも見られます。

夏の暑さを避けるために犬小屋を裏の藪の方に移したという場合、すぐ裏からマダニは迫ってきています。また反射熱で熱いコンクリートの上よりも草むらなどを好んで歩く犬のために散歩コースを変更したという場合も、危険ゾーンを歩くことになっています。

fukei_mura_kaso.png 

<ヒトの感染、動物の感染>

ヒトと同じように野生動物もSFTS感染マダニに咬まれるとSFTS感染をおこします。また犬も猫も感染の報告がみられています。

すべてのマダニがSFTSウィルスを持っているわけではありませんので、「マダニに咬まれた=SFTSに感染」というわけではありません。

 

SFTS発生地域>

20176月の資料では、近畿地方よりも西の地域で、SFTSを発症した患者さんが目立っています。しかし、患者さんの確認されている地域とは別に、患者さんの報告がなかった地域でも、SFTSウィルスを保有しているマダニを確認している地域は沢山有り、北海道でも検出されているほどです。

また、抗体を保有している(過去に感染したと思われる)イヌの調査も行われていますが(抗体保有率は0~15%n:1800)、患者さんの発生がなかった地域でも抗体を持つイヌがいたことがわかっています。

ちなみに愛知県では抗体保有マダニ、SFTSの患者さん、抗体陽性のイヌ、すべてが見られていませんが、お隣の県では見られているので安心してはいけません。

 IMGP0286.jpg
診察室前の掲示板に
国立感染症研究所発行のマダニ対策パンフレットを
プリントアウトして掲示しました。



<マダニから私たちの身体を守る>

私たちがマダニから身を守るためには、不用意に藪や草むらに入らないことが大切です。もし、入るような場合は、登山のときに準じた装備で出かけるようにします。帽子、手袋(軍手)を着用し、首回りもタオルなどを巻いて露出しません。長袖の上着はズボンの中に入れ、長ズボンをはき、靴下のゴムはズボンの上で止めるようにします。靴もサンダルのような足先が開いたものを避け、長靴のような足元をしっかりと隠せる靴を履くようにします。

草刈りなどの作業を行う場合もこれに準じてください。

半袖、短パン、スリッパ履きで早朝、愛犬の散歩に出かけ、犬が草むらにずんずん入っていくのに、足元を朝露に濡らしながら付き合うというのは危険です。

 pet_sanpo_woman_20170804131201c86.png

<虫よけ剤>

ヒト用に認可された虫除けのお薬があり、市販されています。有効成分は「ディート」または「イカリジン」です。「山に行くよ!」という方はこちらを目安にお買い求めください。「子どもにも使えそう。効果穏やかかも。」と思わせるかわいらしい商品から、濃度がもっと濃い成人向け商品などラインナップがあります。

ただ、薬を使用していれば完全に大丈夫というわけではなく、「ダニ回避の装備に補助的に使用する」というスタンスでお願いします。

 

<猫がSFTSに感染したとき>

もし、うちの犬やうちの猫がSFTSに感染していたら、どのような症状を出すのでしょうか。

SFTSの流行地で感染が確認された猫は、屋内飼育、外出自由の環境でした。はじめの症状は発熱、食欲不振だったそうです。

血液検査で、「血小板数の減少、白血球数の減少、血清クレアチンキナーゼ(CPK)の上昇」が見られたそうです。自分から十分に食べることができなかったため、入院措置となり、治療を開始し、2週間で回復、4週後には退院できたとのことです。

発熱や食欲不振だと、特徴的な症状ではないのでわかりにくいかもしれません。また犬は無症候性(症状が全く現れない)のことが多いそうです。

 IMGP0287.jpg
犬とマダニ感染についてのボードも
下げてあります。



<猫から感染?>

今回、感染していたとみられる猫と接触していたヒトの感染が発生しました。

http://www.asahi.com/articles/ASK7S5JJMK7SULBJ00C.html

感染猫に咬まれた結果、猫から感染したのかは不明です。猫は猫で、ヒトはヒトでそれぞれSFTS感染マダニに咬まれていたのかもしれません。しかし亡くなった方に「マダニに咬まれた跡がなかった」ため、「猫→ヒト」感染が疑われています。

これまで確認されている感染経路「マダニ→ヒト」ではなく、今回疑われるような「猫→ヒト」感染があるのであれば、SFTSウィルスは猫の唾液中にも排出されるということになります。感染や予防に対する解釈はより複雑になります。

感染経路がしっかり解明されるまでは「マダニだけでなく、感染が疑われる動物にも十分注意する」のが安全です。

 

<動物をマダニから守る>

犬や猫をマダニから守るのは比較的容易で、有効な駆除剤の使用が予防になります。肩甲骨間の背中の皮膚に滴下する外用薬は効果、安全性ともに満足いく薬です。ホームセンターやペットショップ等で類似商品を目にすることもあるかと思いますが、そちらは効きません。ぜひ動物病院で処方された物をお使いください。

背中に垂らすのは難しい(動物が動いてしまう、噛みついてくる、液剤との相性が悪く滴下すると脱毛してしまうなどの)場合は、経口投与する内服薬もあり、こちらもおすすめです。内服投与はチュアブルタイプのお薬で、自分から食べてくれるため、投与はお手軽です。

また、動物の健康状態についてはいつも以上に気を配ってください。もし、なにか変化があれば動物病院へご来院ください。

 job_medical_cat_nurse.png

<もし犬猫の皮膚にマダニを発見したら>

素手でマダニを取ろうとしてはいけません。マダニは皮膚にとりつくと、皮膚にしっかりと口を突き刺して長時間吸血を続けています。マダニを無理に取ろうとすると、マダニの身体だけが取れて、口だけが皮膚に残ることになります。この部分がのちに化膿することがあります。また、マダニの身体をつかんで取ろうとするときに、膨らんだマダニの身体に圧力をかけることになりますから、マダニの体内にあった血液をマダニの口を通して犬猫の体内に逆流させることになります。これが最も危険な理由です。

とにかくそのまま、動物病院へいらしてください。お車の中でマダニが落下すると困るので、必ずキャリーに入れてきてください。

 

<マダニに咬まれて発症する病気>

SFTS以外にもマダニに咬まれて発症する病気があります。ダニ媒介性脳炎、ライム病、ツツガムシ病、日本紅斑熱などです。ウィルス性疾患の他、リケッチアが原因になっています。

マダニには十分お気をつけて、お出かけください。

 

<マダニの活躍するとき>

夏が終われば安心できると思われるかもしれませんが、マダニは春と秋の産卵シーズンは夏より活発に活動します。気温が15℃を下回るまでは油断できません。夏が終わっても、引き続きご注意ください。

 

 <おわりに>
今日はSFTSの話題で、聞かれることのあったこと、聞かれそうなことについてお話ししました。
衝撃的なニュースだったため、「野良猫=マダニがいる=SFTSウィルスを持っている=人に対して危険」といった連想をされた方がおられたようです。油断してはいけませんが、普通の生活をしている中で、地域猫さんと密な接触をされることはないはずです。普通であれば直接被害を被ることはありません。どうか野猫のことを嫌いであっても、猫に危害を加えることのないよう、お願いいたします。
それからTNRを行われる活動をされる皆さんには、SFTSウィルスとは関係なく、咬まれたりする事故が起こらないよう、これからも安全第一で活動を継続してください。いつも猫さんのための活動をありがとうございます。

 

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