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認知機能障害・2

 認知機能障害についてのお話し、続きです。

治療が可能なのかどうか、もしできるとしたらどんな治療法があるのか、という点をお話しします。

 

<治療が可能でしょうか>

愛犬が認知能力を失うのを見るのは悲しく、ときには邪魔になると感じてしまう飼い主さんもいるかもしれません。(大丈夫。あなただけのことではありません。)けれど失った機能を改善し、生活の質を向上させるためにできることがあります。早期に気づくことができれば、早期に介入することができ、症状の進行はより穏やかになります。「プロセスを止めることはできないけれど、1つの問題から3つの問題に移行しないように処理を遅くすることは可能」なわけです。

高齢動物ができるだけ長い間脳の機能を維持し、認知機能低下の発症と進行を遅らせるのを助けるためにできることはたくさんあります。

 

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<環境エンリッチメント>

「環境エンリッチメント」というのは動物の健康のために飼育環境に変化を与えること、飼育動物に刺激を与え動物の望ましい行動を引き出すことなどをいいます。本来の環境ではないところで飼育されている動物園動物などに、動物の福祉の観点から使われることが多いです。

この範疇に入る生活改善的要素の濃い治療法については、遊びや適度な刺激で脳を活性化できるようにすること、十分な休息が取れるようにすること、排泄問題の解決に結びつくことの3つを提案したいと思います。

①おもちゃ

知育玩具と呼ばれる犬のおもちゃの中には、食べ物のパズルのようなものがあり、脳を刺激します。工夫しないと食べられないおもちゃを食事に利用すると、脳は活動的な状態に保たれるようです。

猫の場合も同じで、とにかく屋内環境を豊かにする創造的な方法を考えてください。

②屋外遊び

定期的に屋外で遊ぶことも犬の脳を刺激し、学習や記憶能力を向上させることができます。年齢や体調に適した定期的な運動は、高齢動物の身体と心を活発に保てます。もし心臓病や関節疾患などで運動の制限を受けていないのであれば、リードをつけて、他の犬や人と交流する機会が得られる公園に連れて行ってください。身体的、精神的に活発な状態に保つことによって、劣化を遅らせることができます。

③安眠できる部屋

静かで暗く快適温度の部屋が必要です。暑いのは人でも寝苦しく、夜間に覚醒します。

④快適なベッド

ふわふわすぎる布団は足腰が弱ってきた犬が立ち上がるのに無理があります。ある程度の固さが残る体重分散型のマットレスが高齢犬用に開発されています。病院でもご紹介しています。

⑤エンドレスサークル

行ったり来たり、ぐるぐる回る運動を延々と続ける場合、タンスやソファの隙間に入って出られなくなり鳴き出す場合などに有効なのは、円形のサークルです。そのまま疲れて動きを止めて眠っても良いように、床には滑りにくいマットを敷いたり、その上をペットシーツで敷き詰めたりします。

⑥トイレに誘う

ある程度の時間が来たら、排泄場所に連れて行きます。屋外のこともあるでしょうし、屋内のペットトイレのこともあるでしょう。

⑦トイレ環境

トイレ場所に行くまでが困難になってきている場合は、あらためて近いところ、利用しやすいところにトイレを近づける方法で改善されることがあります。

⑧おむつ

排泄のための再訓練は困難なことが多く、管理できなくなってくるとおむつをかけることが普通になっているようですが、意識的な随意排泄ができる段階では、狭いエリアでのペットシーツ敷き詰め生活をおすすめします。どうしてもおむつは身体的な拘束がかかり、歩行しにくくなるからです。運動は脳の血行を促進するため認知機能を維持させることができます。歩行しやすいかたちを取らせてやりたいです。

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<行動学的エンリッチメント>

行動学的な言葉で「行動修正療法」というのがあります。行動療法とも呼ばれます。これは問題行動を望ましい行動に変える、改善プログラムのようなものです。

昼間、積極的に活動させると、夜間の睡眠時間を増やすことができます。脳に刺激を与えるところがポイントです。

①運動

規則的な運動や散歩、そこまで行かなくても、人でいったら「体操」程度の軽い運動などで筋肉を動かすことは血行を改善させ、脳の血液循環を良くします。とにかく身体を動かすことです。必ずしも屋外に散歩に出るということではありません。屋内で追いかけっこしたり、さらに高齢になっているときにはマッサージするだけでも良いです。ハイドロセラピーや温熱療法などのお金をかける治療もありますが、家庭でもできることは身体的な運動です。

②遊び

おもちゃを使った遊び、ことに初めてのおもちゃで考えさせるおもちゃを与えるのは脳に効果があります。またご褒美を使ったトレーニングも脳に刺激を与えます。子犬の頃学習したことを忘れないようにする繰り返し学習も効果的です。

③社会的関わり

人や他の犬と関わるのも相互反応に変化がもたらされます。積極的にコミュニケーションさせてください。

④新しいもの

何でも「はじめて!」の経験は脳を刺激します。新しいおもちゃ、はじめて食べるもの、はじめて通る道、はじめて行く所には新たな刺激が沢山あります。小さい子どもの「はじめて」の経験は、脳が疲れてその晩はよく眠るわけですが、それを老犬にも応用してみます。

⑤屋外の空気

散歩や連れ出し(犬が歩かず人がだっこや乳母車で出かける散歩)には視覚的な刺激や聴覚、嗅覚などの刺激もあり、太陽光を当てることができます。

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<サプリメント>

はじめに犬や猫が服用している薬を見直します。高齢動物は、若い動物とは違った代謝になります。犬や猫が何らかの薬を何年も飲んでいると、年を取るにつれて効果が異なってくる可能性があります。あらためて薬を処方し直します。

サプリメントを紹介します。

SAMeS-アデノシルメチオニン)

脳機能の衰えを止めたり改善したりするのに安全で効果的です。もしこれまでにも投与していたのであれば引き続き与えてください。

②中鎖脂肪酸(MCT-オイル)

脳のエネルギー代謝を改善し、高齢のペットに脳損傷をもたらすアミロイドタンパク質の蓄積を減少させることが示されています。 ココナッツオイルがMCTの豊富な供給源です。

DHAEPA

神経細胞膜を安定化させます。セロトニン作用を強め、認知力や記憶力、活動性の向上が期待されます。セロトニンには体内時計の調整作用、覚醒作用、抗不安作用などがあります。

④フォスファチジルセリン

細胞膜を形成するリン脂質(レシチン)の一種です。脳内の情報伝達や脳細胞の活性化に効果があります。

⑤α-カソゼピン

GABA様作用です。不安反応を抑制します。攻撃性のある場合、静穏になる作用を期待して使います。このサプリメントだけを使うことはありません。

⑥抗酸化剤(フラボノイド、αトコフェノール、L-カルニチン、ビタミンCなど)

フリーラジカルによる損傷を防ぐものです。年齢関連の認知障害を抑制することができます。

⑦合成メラトニン

メラトニンの補充をします。睡眠と覚醒のサイクルを正常化するのを期待して使われます。

高齢の犬は夜間に睡眠障害を起こすことがあります。昼夜通して眠りがちですが、一晩中目を覚まし、徘徊したり、夜鳴きを起こしたりします。心配や不快を感じています。そのため、神経細胞を活性化させる物質の他、落ち着かせる効果を持つもの、抗酸化作用があるもの、睡眠に関係するメラトニンなどがあります。脳に良いとされるサプリメントは多数出回っています。それぞれに犬の認知

機能の減退を遅らせるのに役立つだろうと思いますが、薬局やネットで探し出して購入する前にご相談いただけると良いかと思います。

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<最適な食事>

犬の環境を豊かにする努力に加え、認知症予防に配慮した食事を組み合わせることは、認知力向上のための最大のチャンスを提供すると言われています。

犬も猫も、年齢に応じて、最適な食事があります。それは良好な健康と活力の基礎になります。特定の犬用療法食は、認知機能障害を緩和するために配合されています。これは細胞の健康を促進し強化するもので、たいてい抗酸化物質と認知症の健康管理に重要なオメガ3脂肪酸が含まれています。また一般食でも、シニア動物用の食事にはオメガ3必須脂肪が含まれているものがあります。

動物の身体は、代謝、成長および治癒の過程を促進するために理想的なバランスがとれたエネルギー源を必要としています。高齢の動物に適した食事は、生き生きとした動物の健康の源になります。

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<定期検診>

高齢になってからは、年に2回の検査を受けると良いと思います。そうすれば、認知機能障害の問題点を早く知ることができ、またそれに対する治療をはじめることができるからです。身体的な問題の発見と同じくらい、認知機能障害の早期発見は大切です。

環境のこと、行動修正のこと、食事やサプリメントのことなどの推奨事項をお話ししてきましたが、これらのどれも、認知機能低下がかなり進んだ段階では、非常に役立つものではありません。できるだけ早期に問題を診断し治療を開始することが非常に重要です。

家にいるときに気づいた問題や観察点で疑問に思うこと、質問したいことなどをメモしておいて、病院にお越しください。診察室に入るとつい忘れてしまうのが常ですものね。

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<まとめ>

そのほかにも健康への配慮が必要です。

高齢動物は健康的なサイズに保たせましょう。太りすぎの犬や猫は、年を取るにつれて病気のリスクがかなり高くなります。

さらに動物の歯の健康を維持するのも大切です。

認知機能障害のときに使われるお薬もいくつかあります。向精神薬に分類されるお薬です。進行を抑制する薬や不都合な症状に対する対症療法の薬があります。介護されるご家族の精神的な健康も大切です。どうにもこうにも困って、愛犬のことをキライになってしまいそうになる前に、ぜひご相談にお越しください。

認知機能障害は治癒できない進行性の病気ですが、早期の診断と介入は脳の衰えを遅らせ、老化したペットに良質の生活を提供することができます。

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時間には限りがありますね。



 

<おわりに>

918日は敬老の日ですね。愛犬にも愛猫にも、ずっと元気で長生きして貰いたいです。

日野原先生がおっしゃるには「いのちは時間」ということです。大切な家族と過ごす時間、そのものの積み重ねこそが「いのち」なのかもしれません。「命が大切」ということは「一緒に過ごす時間そのものが大切」なのですよね。たくさんの楽しい思い出を作っていきたいです。残りがあと少しになってしまったときに慌てないようにするためにも。

10歳の子ども向けに書かれた本、また幼稚園生にもわかるように書かれた絵本も待合室に置いておきます。子どもだけが読むなんてもったいないです。大人でも涙するくらいに読める本です。お時間のあるときにお手に取ってみてはいかがでしょうか。

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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