前立腺の過形成


犬の前立腺の病気のうちで、一番多いと思われるのは良性の過形成です。一般に「前立腺肥大」と言われているのがこれです。

 

<前立腺の良性の過形成>

良性の前立腺過形成は加齢性の変化です。腺の過形成は若くても始まっています。腺細胞が大きくなることや数が増えることで前立腺全体がボリュームを増します。

組織の中に嚢胞(のうほう)を作ることがあります。嚢胞は拡張した腺で、尿道と通じていることもあります。嚢胞のかたちやサイズはいろいろで、数も一つと決まっているわけではありません。ぽこぽこと複数できていることが多いです。私たちは「蜂の巣状」と表現することが多いです。嚢胞の中には粘調度がうすい透明の(すこし黄色みを帯びた)液体が入っています。

過形成によって前立腺の血管は増え、出血しやすくなっています。

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<前立腺過形成の犬が見せるサイン>

実は、大部分の犬はこれといった症状を現しません。

肥大した前立腺が腹腔から骨盤腔に進入してしまった場合には排便するときに「う~ん」ときばる感じになることがあります。

ときおり尿道から分泌液がぽたぽたっと漏れて(「尿なのか何なのか分からないけど、お汁がたれています」と言われることが多いです)、それが血の混じった様子になることがあります。

血尿が出ることがあります。

元気がない、食欲がない、熱っぽいなどの全身症状は出ないことがほとんどですが、前立腺内にできた嚢胞に感染があるとこのような症状を出すことがあります。

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<検査のこと>

直腸の壁を通して前立腺を触ります。超音波検査で確認をします。臨床的にあまりにも典型的だった場合は、この二つの検査だけで、それ以上の検査を行わないこともあります。

また、たまたま他の検査(膀胱疾患など)で超音波検査を実施しているときに発見されることもあります。

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<手術しましょう>

もっとも効果的な治療は去勢手術です。去勢手術をすると前立腺は数日後には小さくなり始めます。前立腺の分泌物も抜糸する頃には無くなり、1か月後の再診時には半分くらいのサイズになっています。

しかし、前立腺の過形成が発生するまで去勢手術を行わないで来ているには飼い主さんなりの理論があることが多く、さらに「高齢の今になって!?」という不安要素も有り、なかなか受け入れてもらえないこともあります。高齢になったから発生している状態の治療に高齢であることがネックになってしまっているわけです。去勢手術の欠点は、全身麻酔と手術のリスク、これに尽きると思います。年齢の問題は考えても乗り越えられるものではありません。術中はモニタリングをしていますから不慮のトラブルがあってもすぐに対処できますが、術後の回復は若い頃と比較したらゆっくりであることは否めません。「手術を機に被毛が真っ白に(白髪に)なってしまった!」、「毛刈りした部分の毛がなかなか生えそろわない!」、「耳の聞こえが悪くなったみたい!」など、個人の方の主観でマイナスに感じるところも出てくることでしょう。

高齢になった動物の手術に関しては、手術をすることで得られる良いこと、手術をしないでいることで被る悪いこと、手術をすることの悪い点、手術をしないでいることの良い点をそれぞれ考え、じっくり検討して貰った上でご家族の皆さん全員で決定していただき、納得の結論を出していくのが良い方法だと思います。

それでも基本の治療法は手術です。前立腺の過形成に、左右の睾丸の大きさが違うなど、睾丸の病気なども併発していれば、なおさら手術はおすすめの治療です。

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<手術には抵抗があります>

「それでもやっぱり手術は恐い」と思われる方から、「手術意外には方法が無いのですか?」の質問をお受けします。答えからしますと「内科療法が無いわけではありません」になります。

内科療法ですが、一般的にはアンドロゲン(雄性ホルモン)の濃度を低下させるようなホルモン剤を投与します。1週間ほどのませたところで、お薬はお休みです。長期にわたって服用するのは身体に好ましくないからです。しかし数ヶ月もすると同じような症状が出てきます。そこでまた、同じように1週間のホルモン剤投与を行います。延々と同じことを繰り返します。しかしそのうちには、はじめ半年くらい効いていた薬がだんだん効いている期間が短くなってきて、「3か月かそこいらしかもたないなぁ」なんていうことも出てきます。それで当院では1週間のホルモン剤投与のあと、体にやさしい生薬系のお薬を継続して服用して貰っています。副作用に苦しんだ犬はこれまでのところ見ていません。欠点というと、①投薬の手間と②経済的な問題、③手術ほどのストレートな縮小効果が無いこと、④併発している睾丸の病気には効果が無いこと、⑤前立腺内にのう胞があるときは常に感染の心配をしていなければいけないことなどです。

それでも内科療法では去勢手術と同じくらいの効果は望めないことを心の隅にとどめておいてください。

なお、症状が出ていない前立腺の良性の過形成(たまたま超音波検査で発見されてしまったようなとき)には、あえて治療をおすすめしていません。「肥大してきていること」とお伝えして、今後もし症状が出るようであれば、そのときは治療を検討してもらうことにしています。

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<予防することができます>

良性の前立腺過形成(通常、前立腺肥大とよばれています)は予防ができます。ずばり去勢手術です。幼少時に雄性ホルモンの分泌を抑えておくと、高齢になっても過形成による肥大にはなりません。そして若い頃の手術の方が個体に対する負担が少ないことも添えておきます。

 <注意>
前立腺の過形成は良性の変化で、内科治療をするにしてもロングスパン、手術を検討するのにそれなりの時間を費やしたとしてもそうそう問題にはなりません。しかし非常に似た症状を出す前立腺の病気は他にもあり、治療後も症状にぐずつきが見られた場合は単純な「前立腺肥大」ではないのかもしれないことを頭の隅に置いといて下さい。そのような場合は「まだ症状が改善されません!」と来院して下さい。「薬が残っているし、終わるまで再診はいいかな」とのんびり構えないで下さい。

今日のお話はここまでです。

次回は細菌性の前立腺炎についてお話しします。

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