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急性前立腺炎

細菌が感染したときの前立腺の病気についてお話しします。
細菌感染による前立腺の病気は3つあります。
急性前立腺炎、慢性前立腺炎、前立腺膿瘍の3つです。
 

<細菌感染がおこる>

前立腺には正常な防御機構が働いています。前立腺尿道を膀胱から排泄された尿がザーッと勢いよく流れて菌の洗い流し効果があるのもその一つですし、前立腺液そのものには前立腺抗細菌因子(PAF)と呼ばれる抗細菌物質が産生されているので、細菌感染から守られているのです。けれどこのシステムに障害が発生(尿の流れの勢いが無くなる、前立腺のIgA産生が低下するなど)すると、前立腺炎をおこすもとになります。

前立腺は尿道の病気(尿道内に石ができている、尿道に何らかの原因で狭くなっているところがあるなど)や尿路の感染などに付随して感染をおこします。また良性の過形成であっても、前立腺内にのう胞ができると、細菌が繁殖するのに好適な場所になります。感染のルートは血液や精管なども考えられないことはありませんが、たいていは尿路(尿道)を経由して感染します。

前立腺の細菌感染は急性のことと、慢性のことがあります。さらに慢性の炎症が重篤になったり前立腺内のう胞に細菌が感染して「膿瘍」を作ることがあります

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1.急性の細菌性前立腺炎

非常に急に(甚急性といいます)発生します。症状も重く(劇症型とでも言いましょうか)、犬の様子が「オカシイ」ことにすぐに気づかれます。「死んじゃうんじゃないの?」と感じられるくらい調子が悪いです。

ですので、見逃さないように「チェックポイント」とか、「こんな症状に要注意」的なものをあらかじめ見て知っておこうとしなくても犬の異変には間違いなく気づかれると思います。むしろ、私たち獣医師の側で「他の病気と間違えた!」ということがないように、気を引き締めておきたいと思うようなところがあります。急性の前立腺炎を発症するのは未去勢のオス犬ですけれど、中年齢にくくるにはちょっと可愛そうだよねと思うような年齢層の成犬に多いイメージで、ほかの前立腺疾患が中高年であるのと対照的な感じがします。

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<どんな様子になる?>

・ぐったりします。(無気力といっています)

・嘔吐することがあります。(高熱のためです)

・ぎこちない歩き方をします。(後ろ足がこわばった感じ)

・ぐったりしすぎて歩けないこともあります。

・包皮から汁が出ることがあります。

 

<病院で診察すると・・>

・発熱が見られます。40℃とかそのくらいの高熱です。

・沈うつで、ふだんなら診察に抵抗するような犬も無抵抗です。

・触診すると前立腺周り(お腹の後ろの方)に痛みを示します。

・直腸検査で前立腺が大きくなっているのが分かります。

 IMGP0588.jpg

<検査をすると・・>

・尿中に炎症性の細胞や細菌が出現しています。

・血液検査で白血球増多が確認できます。(少なくなっていることもあります)

・超音波やX線などの画像検査で前立腺が大きくなっているのが確認できます。前立腺にはのうほうができていることが多いです。

 

<診断には・・>

おうちでの様子、診察した所見、検査の結果などから総合的に判断して「急性の前立腺炎」を診断します。他にも発熱性の疾患はあります。前立腺意外の病気でも同じような症状が出ることがあるので、別の病気では無いことも確認して決定します。

IMGP0595.jpg 

<念入りな治療になります>

高熱でぐったりしていることがほとんどです。これは急性の前立腺の細菌感染はそのまま、敗血症(全身に菌が回っている)になっていることが多いためです。できるだけ早く解熱させてやりたいです。それで、

・補液剤とともに静脈性の抗生剤を点滴で入れていきます。

・嘔吐して電解質のバランスが崩れていると補液剤を調製しなくてはいけないかもしれません。

・中枢性の制吐剤で嘔吐を止めてやります。

・点滴による抗生剤治療は3日から7日くらい続け、効果の判定ができたらその後は内服薬に切り替え、さらにしばらく投薬を続けます。

・炎症が鎮まり、病態も安定したら再発が起こらないように去勢手術の同意をお願いします。



<注意>
菌血症による発熱がおさまり、平熱になると犬はものすごく元気になります。たいていの飼い主さんは「もう点滴治療なんかしなくたって餌も十分食べるし大丈夫だ」と思われます。中には「早く点滴を止めてくれ」と言われる方もおられます。しかし個々で油断をすると抑えられていた菌の残りが再活動を始め、慢性の前立腺炎に発展する可能性があります。
慢性の前立腺炎の方が扱いはやっかいです。せっかく急性の症状を出し私たちに積極的なアピールをしてくれたわけですから、ここは大事に扱い、これだけで病気を鎮めてやりたいと思います。



細菌感染による前立腺の病気、慢性前立腺炎と前立腺膿瘍は次に続けます。大変お寒くなってきました。どなたさまもお身体をおだいじにしてください。

 

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