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保護動物の治療のことなど

 新年おめでとうございます。

新しいカレンダーがずっしりと重く、今年もまた新たな気持ちでがん張っていかねばという新年のきりりっとした気分をもり立てています。今日は日頃思うことをお話しします。

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今年も手作りの干支作品を作っていただきました。

<教育支援の放課後学校>

昨年末のことでしたが、SNSに流れてきたニュースに子供の無料学習塾のことがあり、ちょっと目にとまりました。NPO法人で放課後学校のようなことをされている団体さんのことです。少し前に、同じような取り組みをされている別の組織のことをどこかの新聞が報じていたような気がします。そしてその前に読んだ小説にも同じようなことが書かれていました。題名、何だったでしょう?(細かいことが思い出せなくなっております。)

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くーちゃんのお母さん、ありがとうございます。

<学習塾と動物病院>

いつからだったか「学習塾と動物病院って似ている!」と思うようになってきました。

学習塾もいろいろありますよね。同様に動物病院も多様化してきました。

例えば塾には補修塾と進学塾がありますが、補修塾は家庭医としてすべての病気の窓口になっている一次病院のようであり、進学塾は一次病院で発見された病気を突き詰めていく専門性の高い二次病院のようです。進学に特化した教育を投入することで難関問題をクリアし進学できることと、動物病院で特殊検査を行い、専門的な治療を施すと難儀な病気も改善させられることは似ていると思います。

それからチェーン展開し同一のテキストで授業ができる塾がありますが、動物病院にも全国にチェーン展開しペットショップに併設されている病院があります。そしてそのような塾では、どの講師が行う授業の内容も均一になるように若手講師たちが教育指導を受けているのだとか。同じようにグループ病院に勤務する獣医師たちは同一のセミナーを受講し、獣医師による診療のばらつきが出ないような仕組みになっています。

個人塾の中には、驚くような進路実績の成果を上げていたり、短期間で偏差値の急上昇をもたらす指導をされていたりする先生がいらっしゃいます。おそらくこういう塾が、家庭医としての役割を果たす動物病院になるのでしょう。生徒の興味や性格、部活動などの生活全般を通して最適な学習方法を指導していく方法は、同じ病気にかかっても病気になった個体の特性に応じて最適な治療を行っていくのに等しいと思います。

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紅白の土鈴は青蓮院門跡で。
皆さまのお願い事が叶い、
つつがなき一年を過ごされますように。

<教育支援と保護動物の治療>

さて、NPO法人による無料の学習援助は、勉強したいのだけれど勉強のやり方が分からない、学校の勉強だけでは授業について行けない、けれどさまざまな理由があって塾に行きたいのだけれど塾に行けない子供たちに光を差した取り組みです。このままうまくいって欲しいと願います。

同じように、獣医療を必要としているのに受けられない動物がいます。飼育動物でもそのようなことがあるのは今に始まったことではありませんが、決まった飼育者が居るわけではない地域猫は、獣医療の恩恵に当たることができない動物たちの筆頭にあげられると思います。TNRのニュータード手術を依頼された猫の中に、このままリリースされるにはためらわれるほどの外傷を負った猫がいます。人慣れしていない猫たちにとっては拘束して治療を続けることのストレスもあり、入院加療をさせて貰うのが良いことなのか、慣れた地域の慣れた餌やりさんにご協力願うのが良いのか、そもそも放していつもの餌やり場にまたやって来てくれるのだろうかと今後の治療プランに悩みました。また雄志の方々からの援助で不妊手術を受けることになった猫たちの、プラスアルファの治療費は一体どこから捻出したらよいのでしょうか。たまたま縁のあった個人の方の負担になってしまうのでしょうか。このような動物の治療においても、無料の学習支援塾のような形態の動物病院ができたら良いのにと切に思いました。「動物病院」という名称はあまりふさわしくなく、「保護ケア施設」と言う方がふさわしいかもしれません。

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張り子の犬、こちらは真清田神社で。
初宮参りの記念の張り子です。
子供の健やかな成長を祈って作られている物です。

<保護動物の治療と管理ができる施設>

犬猫の「殺処分ゼロ」への取り組みがなされています。「飼育できなくなった犬猫たちの引き取り」を無くし、「尊い命を守る」ことにおいて十分意味のある取り組みです。これさえもまだ十分に機能しているとはいえない段階なのですけれども、さらに次の段階として「身寄りの無い動物たちが病気やけがをしたときに治療と看護をする保護施設」の必要性を感じます。

海外では野生動物を一時的に治療し、準備段階を経て再び野外に送り出す施設があります。負傷の程度により永久に野生化させられない動物もいると聞きました。

既存の「動物保護管理センター」さんに、この機能までをお願いするには仕事量とスタッフ数など問題があり、新たな税金投入をして施設の充実を図るなどしないと難しいでしょう。放課後学校が公的な施設ではなく、NPOさんたちが作る施設であることを考慮すると、負傷動物のための新たな施設を公的に作っていただくのはさらに難題であるかもしれません。

「飼い主のいない動物たち専門のケア病院」が寄付によって各地に生まれ、存続できる日が来ることを願ってやみません。

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招福の張り子。
古くは犬張り子は江戸みやげの子供の玩具だったそうです。
うちの犬も花咲かじいさんに登場する犬のように
金運をもたらしてくれるといいですよね。

暖かな部屋のふわふわのお布団で好物も要求し放題、おなかいっぱい食べられている動物がいる一方で、いかに自由を持っていようとも冬空の寒さの中お腹をすかせたままに眠る夜を今夜も迎える動物がいることに心が痛みます。子猫を産んでも、小さなときにカラスにくわえられ連れ去られるとか、さまざまなウィルス疾患に罹患して成長もできないまま亡くなっていく子猫を母猫はどう見ているのでしょうか。

多くの患者さんに支えられ、ハート動物病院は地域の獣医療を継続してやってまいりました。大仰な保護センターの建設や新たな試みをするほどの力量はありませんが、このような獣医療困難動物のためにできる小さなことをこれからもやっていこうと思います。

本年が皆さまにとりましてよき年であり、たくさんの笑顔を拝見できますように。合掌

 

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テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

世界狂犬病デー

9月28日は世界狂犬病デーです。「世界狂犬病デー(World Rabies Day)」は、今なお、世界中で猛威をふるい続ける狂犬病の撲滅を、地球規模で呼びかけることを目的に、世界保健機構(WHO)と国際獣疫事務局(OIE)、EUの合同会議で2007年に定められました。
今日は狂犬病についてお話しします。

<世界狂犬病デーについて>
世界における狂犬病対策を目的とした地球規模の団体があります。「Alliance for Rabies Control」は2006年に欧米の研究者や専門化を中心に結成されました。彼らの活動の一環として定められたのが始まりです。世界中に向けて、彼らの活動に参加するよう呼びかけられました。
「世界狂犬病デー」の目的は、人や動物における狂犬病がいかに簡単に発症を防ぐことができ、また、どのようにすれば撲滅できる病気であるのかを知って貰うことです。

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<あらためて狂犬病のこと>
人と動物に共通する感染症として、狂犬病は何を置いても知っておいてもらわなければいけない病気です。「もう
50年以上も日本では発生がないのだから心配は要らない」というような間違った考えも巷には流れていますが、それをそのまま鵜呑みにしていてはいけません。
今年7月にはマレーシアで狂犬病に感染した子どもが死亡しています。マレーシアでも20年ぶりのことだそうです。

 
<狂犬病の感染>
神経細胞に親和性の高いこのウィルスは、感染すると末梢神経から徐々に上行性に中枢神経(脳)を冒していきます。最終的には脳の神経麻痺を起こし、呼吸の麻痺から死亡します。発症したら助からないたいへん怖い病気です。

<狂犬病の発生がない国>
ラブドウィルスとかリッサウィルスというのは、この狂犬病ウィルスの所属するグループ名です。同じ仲間のウィルスが起こす感染症に「リッサウィルス感染症」というのもあります。狂犬病と同じようにコウモリが媒介して広がる感染症です。
世界の国々で狂犬病の発生がない国はわずかで、その清浄地域といわれている台湾でも、つい数年前(
2013年)にイタチアナグマから発生しましたし、清浄国として有名なオーストラリアやイギリスでもリッサウィルス感染症の発生は起こっています。

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<日本は清浄国>
日本における状況ですが、1950年に狂犬病予防法ができてから人も犬も発生件数は減少し、1970年に1例、2006年に2例の発症はありますが、いずれも輸入事例、海外からの持ち込み発症で、国内での発生はありません。

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<国内の予防注射接種率>
国内の狂犬病予防注射の接種率は、登録件数からみると
70%強ありますが、飼育頭数から推定すると40%にも届きません。ワクチンの有効性は80~90%と言われていますので、報告書の上から推察すると、現状では国内の発症がおこったらすぐに蔓延する危険が高い、という評価になります。

<感染してからワクチンを打つ>
治療として、「暴露後ワクチンが有効」であることが知られています。犬に噛まれてもすぐだったらワクチンを打てば助かることがある、というものです。何故、感染してしまってからワクチンを接種するのか、そしてどうして抗血清ではなくてワクチンなのか、疑問に感じていました。

動物に咬まれる部位ですが、たいていは手や足など、脳から遠い部分です。この咬まれた部分(末梢)から
1日に2cmの速さで中枢神経に向けて感染性ウィルスが上っていくそうです。それで、脳に達する前にワクチン接種をすることで一命を取り留めることができるのだそうです。

1日に2cmのスピードなら意外に遅いから、噛まれても間に合うのでしょうか。それでちょっと考えてみました。マレーシアで亡くなった小さい子どもは4歳と6歳です。中型犬の口の高さになる場所というと、子どもでは腕の上の方から肩口になるかもしれません。その上腕部あたりを噛まれたと想定すると、噛傷の翌日にワクチン接種ができたとしてもすでに脳に近いため、命は危ういことになります。しかし成人でも倒されて頚部を咬まれていれば同じことでしょう。いくら暴露後に治療が可能なワクチンを接種できたとしても、やはり恐ろしいことに変わりはありません。う~ん。救急治療はどのようなことをするのかはドクターにお任せすることにして、大事なのは感染しないようにすることです。

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<身を守る>
今のところ日本では発生はありません。ですから感染の機会が発生するとしたら、海外旅行に出かけたときに問題はおこることになるでしょう。
海外にあっては、むやみに犬に手を出さないよう、特に犬好きのお子さんにはしっかり伝えてください。日頃から知らない犬との接触についての教育が必要です。

<犬には予防接種が大切です>
国内で犬を飼育される場合、「うちの犬を病気から守る」という観点は捨て、「悪性伝染病の広範な感染拡大を予防する」という集団防御の観点から予防注射が必要であると認識ください。またお友達にもそういうわけなのよ、って伝えていただくと、この考えが広まると思います。

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10月はじめには、春期の狂犬病予防接種が済んでいない犬に向けて、いわゆる「督促状」が届くことと思います。もしまだ今年度の予防注射がお済みでない場合、秋は集合注射はありませんので動物病院にお越しください。

狂犬病予防注射に関してはいろいろなことがネットで言われています。何が本当なのか混乱されている飼い主さんも大勢いらっしゃるでしょう。
小動物獣医科病院の繁盛なんていう小さな問題はどうでも良いです。犬に対する狂犬病予防注射は「うちのわんこを狂犬病から守る」というところから始まり、「小さな積み重ねが世界の狂犬病の発生を防ぐ」に繋がっています。
「こうすることで狂犬病の撲滅に向けた世界規模の運動に参加しているのだ」という意識をみなさんに持っていただけるとうれしいです。よろしくお願いします。

 

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ジャンル : ペット

トキソプラズマのお話し

 先日、新しく猫を飼育始めた患者さんに「トキソプラズマ症」が心配であるとのご相談をお受けしました。トキソプラズマ症はこれからお母さんになろうという年齢の方には特に関心の高い人獣共通伝染病です。今日は「トキソプラズマ症」についてお話しします。

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感染性を持つ成熟オーシストを
経口摂取すると感染します。
そのほかシストやタキゾイトのかたちの
ものからも感染します。





<トキソプラズマは寄生虫>

トキソプラズマは猫を終宿主とする寄生虫で、犬や鳥に寄生するコクシジウムと同じ原虫の仲間です。おなかの寄生虫としてよく知られている「回虫」や「鉤虫」は線虫類で、腸管のなか(食べ物の通り道である管腔の中)にいますが、原虫は腸粘膜の細胞の中にいます。腸管をちくわに例えると、線虫類はちくわの輪っかの真ん中、チーズやキュウリを通す部分に住んでいます。原虫はちくわがチーズに接触する部分の、ちくわの表面だけどちくわそのものの中に住んでいます。線虫はミミズのようなかたちで目でも確認できますが、原虫は顕微鏡でなければ確認することはできません。細胞の中に入ってしまうくらいですので、すごく小さいです。そして、成長の過程でかたちが変わります。うんちの中に排泄されるときは「オーシスト」と呼ばれる小さな楕円型をしています。10×12㎛の大きさです。体内に入って急速増殖するときは「タキゾイト」と呼ばれるまが玉みたいなかたちです。2×6㎛の大きさです。増殖を中止し、ひとまず落ち着いてなりを潜めるときは「シスト」と呼ばれ、比較的大きな球の中に沢山の分子を蓄えたくす玉のようなかたちです。「オーシスト」「タキゾイト」「シスト」はそれぞれ増殖段階のステージ名になります。

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猫の体内では腸管だけでなく
他の臓器にも分布していきます。
 

<猫のトキソプラズマ症>

猫にトキソプラズマが感染していると、どのような症状が現れるのでしょうか。

ほぼ、無症状のことが多いです。虫自体は非常に小さく、また増殖する場所がさまざまな場所であるため、寄生場所により、寄生された猫の様子も異なります。そして寄生場所がいろいろあるので、猫がトキソプラズマに感染しているかどうかの検査方法は糞便検査だけでなく、血液検査や組織検査に頼ることになります。

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豚肉にはトキソプラズマ感染性のものがあります。
見た目には分かりません。

 

<トキソプラズマはどこから感染するのか>

猫はトキソプラズマの「オーシスト」か「シスト」を含んだネズミ(の生肉)を食べるとトキソプラズマに感染します。傷や粘膜から「タキゾイト」が侵入してくることもあります。母さん猫から胎盤を介して感染することもあります。

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猫の腸内、腸絨毛の上皮細胞内で増えていきます。
細胞が破れ、糞便中に出てきます。




<猫のトキソプラズマ症いろいろなパターン>

①腸管

経口感染したトキソプラズマは猫の腸粘膜の細胞の中で増殖します。一度に大量感染すると、粘膜細胞も一時に壊れるため、下痢などの症状は重篤になります。でも子猫や猫免疫不全ウィルスに感染した猫以外は、無症状であることが多いです。

②全身

状態の悪化した猫では、発熱したり、リンパ節が腫れるなどの全身症状を出すこともあります。妊娠猫では流産をおこすこともあります。

③中枢神経(脳)

進行性の麻痺をおこすことがあります。

④眼

ぶどう膜炎の症状(眼が赤い、角膜が濁って白いなど)をおこします。繰り返されることもあります。

 

<猫のトキソプラズマ症の検査>

猫がトキソプラズマに感染しているかどうかは糞便検査と血液検査で調べます。

①糞便検査

トキソプラズマが沢山増えると、腸粘膜細胞を破ってオーシストが出てきます。このときは糞便検査で「オーシスト」を確認することができます。とても小さいため、数が少ない場合は見逃してしまうこともあります。また、他のコクシジウム類との鑑別はできません。

トキソプラズマが腸粘膜細胞を破っていないときは糞便検査でオーシストを見つけ出すことは出来ません。外部委託の糞便を利用した検査は、特異的な遺伝子検査によるものです。オーシストを見つけ出せなかった場合もトキソプラズマを見つけ出します。

②血液検査

血液検査も外部委託検査です。感染が認められた猫にはトキソプラズマ抗体ができています。血清中のトキソプラズマ抗体の量を調べます。

このほか

③組織検査

④マウスに接種する検査

がありますが、これらは実際的な臨床検査ではありません。

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始めて感染するのが妊娠時だと
胎盤を介して胎児に影響します。




<抗体検査についてもうちょっと>

ヒトの妊娠時のトキソプラズマ検査は抗体価と同時に特異的IgMIgGを測定すると、感染間もない感染なのか、過去の感染なのかを鑑別することができるそうです。(抗体価は感染があったかどうかをみるものですので、あるから心配、ないなら安心ということではありません。詳しい解釈については産科の先生にお尋ねください。)

猫の場合は、この特異的検査はできません。今の感染なのか、過去の感染なのかを判断するのは少し時間を空けてから(たいていは2週間から3週間)もう1回測定して、前回と今回の2つの価を比較する方法で調べていきます。抗体価に変化がなければ過去の感染で、抗体価が急上昇しているようなら今回の感染、今が急性感染期であることになります。

 

<ヒトのトキソプラズマ感染経路>

ヒトも経口感染でトキソプラズマに感染します。

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猫の糞便中に排泄されたオーシストは
成熟すると感染性となり、
土や砂の中でしばらく生きています。



①猫の糞から

猫の糞に混じっていた成熟オーシストを口にしてしまうと感染します。でも猫の糞を口にするというのはどのような状況でしょうか。ヒトは猫のウンチを食べることはありません。しかし家猫が感染していたとき、おうちの中の猫トイレで排泄した猫の便を片付けるときに、もしかしたら手に付着してしまうのかもしれません。昔から「危険ですよ」と言われてきたのは、公園の砂場です。公園の砂場に外猫が排泄した便があると、子どもが砂場遊びをするときに一緒に遊んでいたお母さんの手にトキソプラズマの成熟オーシストが付着することがあります。公園で砂場遊びをする機会は減っているかもしれませんが、猫は良く耕されてふわふわになっている土が大好きです。畑仕事をされるアグリお母さん、家庭菜園でも、ガーデニングでも条件は同じことになります。

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生肉を下処理するとき、
まな板や包丁にシストが付着します。
調理器具の洗浄が不完全だと感染します。




②不十分な加熱処理の豚肉から

「牛肉はレアで食べても良いが、豚肉はしっかり加熱調理して食べましょう」というのを聞いたことがあるでしょうか。豚はトキソプラズマの中間宿主になっていて(ヒトも中間宿主です)、お肉の間にトキソプラズマのシストがあるかもしれないからです。不十分な加熱による経口摂取は、獣肉加工品であるソーセージ(生のもの)の場合も関係してきますが、まな板の上で生の豚肉を下処理した後、まな板や包丁を十分に洗わず、生で食べる野菜を処理したときにも感染の心配が出てきます。むしろこのパターンが一番多いのではないかと言われてきました。今、人気のジビエ料理ですが、野生動物(シカなど)も感染の危険はあります。

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加熱不十分な豚肉とその加工品から
感染することがあります。







 <ヒトのトキソプラズマ感染>

ヒトがトキソプラズマに感染した場合、終宿主である猫の感染とは少し違ってきます。腸の血管内に侵入したトキソプラズマは増殖体であるタキゾイトのかたちで全身に運ばれ、あらゆる組織に入り込み、増殖していきます。特に薬や抗体が届きにくい場所である脳、筋肉、眼などでは、シストを形成して生き残ります。妊娠中であると、胎児にもタキゾイトは侵入します。流産を起こしたり、胎児の発育不全が起こります。

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妊婦さんへの感染の主だった経路は3つで
猫だけが犯人ではありません。
注意すれば感染を防ぐことが可能です。


 

<トキソプラズマからの感染を防ぐ>

ヒトの感染を防ぎましょうという内容です。

①飼い猫をクリーンに

家猫がネズミを捕食するのはトキソプラズマ感染の危険を持ちます。豚肉の入っていたトレーをいたずらしたネズミは豚肉からトキソプラズマ感染を受けているかもしれません。するとネズミの身体にトキソプラズマのシストがあるわけです。猫の捕食行動は止めさせることはできないかもしれませんが、もし見つけることがあれば摂食は止めさせてください。

②家猫からの感染防御

糞便中に排泄されるオーシストが感染能力を持つ「成熟オーシスト」になるまでには1~2日かかります。猫の排泄した便は速やかに、そしてビニール袋などを使ってお掃除してください。

③野猫からの感染防御

屋外で野猫が排泄をするかもしれない砂場や畑の土はビニールやゴム製の手袋をつけて扱うようにします。

④食肉からの感染防御

豚肉は十分に加熱調理するようにしてください。また調理器具の取り扱いにも注意してください。(平成17年から22年の出荷豚のうち抗体陽性であるものは平均して3.9%ほどあるそうです。)

 

<おわりに>

今日は人と動物の共通感染症であるトキソプラズマについてお話ししました。

飼い猫からの感染に不安があっては、猫さんを十分に愛することはできません。不安があるときは検査にお越しください。

 

猫を飼うと、「癒やされるぅ~」と思います。
猫がまだ子猫で、自由奔放に遊んでいると、それを見ているだけで私たちは癒やされ、元気になれます。
それから少し猫が年を重ねていくと、なかなか人の様子を読むのがうまくなります。「今日は疲れているみたいだな」、とか「やばい。怒ってるぞ」、というのが分かるようになるみたいです。知らんぷりしているようで、実はなかなかいいパートナーシップを取ってくれています。ありがたいです。こちらのメンタルな部分も含めて、理解してくれてそのような行動に出てくれるのです。そしてこの頃になると、私たちは猫に頼って、猫に甘えて生きていくようになってしまっているかもしれません。猫を相手にした語りかけが増えていきます。

もう少しすると、これもあっという間で早いのですが、自分の年齢を超えてしまっています。「あれ?老けた?」と感じた頃から、「猫に語りかける」のを卒業して「猫の声を聞く」ようにしてもらえるとうれしいです。そこからは今まで以上に「猫を甘やかしてあげる」ようになってほしいです。

それから、「猫の声を聞いて欲しい」ので、あなたは元気でいてください。猫が高齢になってからはなおさらです。猫を飼育するやさしいあなたにはぜひ、ぜひ、いつも元気でいてもらいたいです。
そんなわけで、暑い日が続いておりますが、ご自愛ください。

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SFTS感染症

 先々週、お世話していた野良猫に噛まれた女性がSFTS感染により亡くなっていた、というショッキングなニュースが報道されました。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG24H7H_U7A720C1CR8000/

同日、獣医師会からも、SFTSウィルスに感染した猫の事例が発生しているとのお知らせも入ってきました。外来でもにわかにSFTS感染症についての話題が増えています。

 

SFTS

SFTSというのは「重症熱性血小板減少症候群」のことです。「severe fever with thrombocytopenia syndrome」の頭文字4つをとって 省略した名称です。

 

<マダニから感染>

SFTSは、SFTSウィルスを保有したマダニに咬まれて感染します。

マダニは家の中に発生するイエダニ、植物にいるハダニなどとは全く違うダニです。

 

<マダニのいるところ>

以前、マダニはシカやイノシシなどの野生動物が生息する山中に生息すると考えられていました。しかし民家の裏山でも見られますし、田畑のあぜ道や公園、川縁の草深いところでも見られます。

夏の暑さを避けるために犬小屋を裏の藪の方に移したという場合、すぐ裏からマダニは迫ってきています。また反射熱で熱いコンクリートの上よりも草むらなどを好んで歩く犬のために散歩コースを変更したという場合も、危険ゾーンを歩くことになっています。

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<ヒトの感染、動物の感染>

ヒトと同じように野生動物もSFTS感染マダニに咬まれるとSFTS感染をおこします。また犬も猫も感染の報告がみられています。

すべてのマダニがSFTSウィルスを持っているわけではありませんので、「マダニに咬まれた=SFTSに感染」というわけではありません。

 

SFTS発生地域>

20176月の資料では、近畿地方よりも西の地域で、SFTSを発症した患者さんが目立っています。しかし、患者さんの確認されている地域とは別に、患者さんの報告がなかった地域でも、SFTSウィルスを保有しているマダニを確認している地域は沢山有り、北海道でも検出されているほどです。

また、抗体を保有している(過去に感染したと思われる)イヌの調査も行われていますが(抗体保有率は0~15%n:1800)、患者さんの発生がなかった地域でも抗体を持つイヌがいたことがわかっています。

ちなみに愛知県では抗体保有マダニ、SFTSの患者さん、抗体陽性のイヌ、すべてが見られていませんが、お隣の県では見られているので安心してはいけません。

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診察室前の掲示板に
国立感染症研究所発行のマダニ対策パンフレットを
プリントアウトして掲示しました。



<マダニから私たちの身体を守る>

私たちがマダニから身を守るためには、不用意に藪や草むらに入らないことが大切です。もし、入るような場合は、登山のときに準じた装備で出かけるようにします。帽子、手袋(軍手)を着用し、首回りもタオルなどを巻いて露出しません。長袖の上着はズボンの中に入れ、長ズボンをはき、靴下のゴムはズボンの上で止めるようにします。靴もサンダルのような足先が開いたものを避け、長靴のような足元をしっかりと隠せる靴を履くようにします。

草刈りなどの作業を行う場合もこれに準じてください。

半袖、短パン、スリッパ履きで早朝、愛犬の散歩に出かけ、犬が草むらにずんずん入っていくのに、足元を朝露に濡らしながら付き合うというのは危険です。

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<虫よけ剤>

ヒト用に認可された虫除けのお薬があり、市販されています。有効成分は「ディート」または「イカリジン」です。「山に行くよ!」という方はこちらを目安にお買い求めください。「子どもにも使えそう。効果穏やかかも。」と思わせるかわいらしい商品から、濃度がもっと濃い成人向け商品などラインナップがあります。

ただ、薬を使用していれば完全に大丈夫というわけではなく、「ダニ回避の装備に補助的に使用する」というスタンスでお願いします。

 

<猫がSFTSに感染したとき>

もし、うちの犬やうちの猫がSFTSに感染していたら、どのような症状を出すのでしょうか。

SFTSの流行地で感染が確認された猫は、屋内飼育、外出自由の環境でした。はじめの症状は発熱、食欲不振だったそうです。

血液検査で、「血小板数の減少、白血球数の減少、血清クレアチンキナーゼ(CPK)の上昇」が見られたそうです。自分から十分に食べることができなかったため、入院措置となり、治療を開始し、2週間で回復、4週後には退院できたとのことです。

発熱や食欲不振だと、特徴的な症状ではないのでわかりにくいかもしれません。また犬は無症候性(症状が全く現れない)のことが多いそうです。

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犬とマダニ感染についてのボードも
下げてあります。



<猫から感染?>

今回、感染していたとみられる猫と接触していたヒトの感染が発生しました。

http://www.asahi.com/articles/ASK7S5JJMK7SULBJ00C.html

感染猫に咬まれた結果、猫から感染したのかは不明です。猫は猫で、ヒトはヒトでそれぞれSFTS感染マダニに咬まれていたのかもしれません。しかし亡くなった方に「マダニに咬まれた跡がなかった」ため、「猫→ヒト」感染が疑われています。

これまで確認されている感染経路「マダニ→ヒト」ではなく、今回疑われるような「猫→ヒト」感染があるのであれば、SFTSウィルスは猫の唾液中にも排出されるということになります。感染や予防に対する解釈はより複雑になります。

感染経路がしっかり解明されるまでは「マダニだけでなく、感染が疑われる動物にも十分注意する」のが安全です。

 

<動物をマダニから守る>

犬や猫をマダニから守るのは比較的容易で、有効な駆除剤の使用が予防になります。肩甲骨間の背中の皮膚に滴下する外用薬は効果、安全性ともに満足いく薬です。ホームセンターやペットショップ等で類似商品を目にすることもあるかと思いますが、そちらは効きません。ぜひ動物病院で処方された物をお使いください。

背中に垂らすのは難しい(動物が動いてしまう、噛みついてくる、液剤との相性が悪く滴下すると脱毛してしまうなどの)場合は、経口投与する内服薬もあり、こちらもおすすめです。内服投与はチュアブルタイプのお薬で、自分から食べてくれるため、投与はお手軽です。

また、動物の健康状態についてはいつも以上に気を配ってください。もし、なにか変化があれば動物病院へご来院ください。

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<もし犬猫の皮膚にマダニを発見したら>

素手でマダニを取ろうとしてはいけません。マダニは皮膚にとりつくと、皮膚にしっかりと口を突き刺して長時間吸血を続けています。マダニを無理に取ろうとすると、マダニの身体だけが取れて、口だけが皮膚に残ることになります。この部分がのちに化膿することがあります。また、マダニの身体をつかんで取ろうとするときに、膨らんだマダニの身体に圧力をかけることになりますから、マダニの体内にあった血液をマダニの口を通して犬猫の体内に逆流させることになります。これが最も危険な理由です。

とにかくそのまま、動物病院へいらしてください。お車の中でマダニが落下すると困るので、必ずキャリーに入れてきてください。

 

<マダニに咬まれて発症する病気>

SFTS以外にもマダニに咬まれて発症する病気があります。ダニ媒介性脳炎、ライム病、ツツガムシ病、日本紅斑熱などです。ウィルス性疾患の他、リケッチアが原因になっています。

マダニには十分お気をつけて、お出かけください。

 

<マダニの活躍するとき>

夏が終われば安心できると思われるかもしれませんが、マダニは春と秋の産卵シーズンは夏より活発に活動します。気温が15℃を下回るまでは油断できません。夏が終わっても、引き続きご注意ください。

 

 <おわりに>
今日はSFTSの話題で、聞かれることのあったこと、聞かれそうなことについてお話ししました。
衝撃的なニュースだったため、「野良猫=マダニがいる=SFTSウィルスを持っている=人に対して危険」といった連想をされた方がおられたようです。油断してはいけませんが、普通の生活をしている中で、地域猫さんと密な接触をされることはないはずです。普通であれば直接被害を被ることはありません。どうか野猫のことを嫌いであっても、猫に危害を加えることのないよう、お願いいたします。
それからTNRを行われる活動をされる皆さんには、SFTSウィルスとは関係なく、咬まれたりする事故が起こらないよう、これからも安全第一で活動を継続してください。いつも猫さんのための活動をありがとうございます。

 

テーマ : 動物病院
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鳥インフルエンザ

 14日と6日に西尾市で回収された野鳥(それぞれホシハジロ1羽とスズガモ1羽)は鳥取大学で検査を受け、どちらも高病原性鳥インフルエンザウィルス(H5N6型)が検出され、確定診断されました。

 ニワトリの足跡ライン

現在、環境省の野鳥における高病原性鳥インフルエンザの対応はレベル3、国内複数箇所発生時のときの対応になっています。そのため、リスクの低い種類でも、同じ場所(見渡せる範囲を同一場所とします)での合計死亡羽数がまとまった数あれば調査を実施することになっています。(詳しくは鳥の種類によって数の規定があります。)

西尾市内でも近隣の地域でも、養鶏を営んでいらっしゃる事業所は多数あります。そこへ感染が発生することはなんとしても避けたいです。もしお近くの同じ場所で沢山の野鳥が死んでいるのを見かけられた場合は、西三河県民事務所環境保全課へご連絡ください。

また、万が一ご家庭で飼育されている鳥(ペットの鳥)に異常が見られた場合は、愛知県動物保護管理センターへご連絡ください。

ニワトリとヒヨコのライン 

先日のお話(ハートのブログ11日号http://heartah.blog34.fc2.com/?editor)と重なりますが、以下の点にご注意ください。

1、高病原性というのは、家禽に対する毒性が強いという意味で、人に感染して高い病原性を示すという意味ではありません。

2、鳥に感染した後、鳥の体外に出たウィルスは乾燥や紫外線に対してきわめて弱いため、比較的短時間で消失します。

3、そのため、多くの鳥が存在し次々に感染が起こる場合を除いては、ウィルスがその場にとどまって悪さをすることはありません。

4、飼い鳥は沢山の鳥と絶えず接触しているわけではないので、普通にしていて感染する危険度は低いです。

5、それでも、ウィルスを持ち込まないように飼い鳥と野鳥との接触は止め、日常の健康観察も怠らないようにお願いします。

6、死亡している野鳥を見かけた場合、素手で触らないでください。日常生活でもし野鳥の排泄物に触れた場合はしっかり手洗いしてください。

7、野鳥の糞が靴の裏や車両(タイヤ等)に付着し、鳥インフルエンザウィルスが他の地域に運ばれることがあります。野鳥の地域に近寄らないようにしてください。

8、バードウォッチング程度で感染する可能性は低いと考えられていますが、野鳥の糞を踏まないように注意してください。もし靴の裏に付いてしまったら塩素系の漂白剤で消毒してください。

9、くわしくは「高病原性鳥インフルエンザから愛玩鶏を守るために」を参考にしてください。

 http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/tori/pdf/aigan_pamphlet.pdf

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テーマ : 動物病院
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