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猫の下部尿路疾患によいおすすめの処方食

今日は猫の下部尿路疾患(FLUTD)向けの処方食、当院でおすすめしているものについてですが、栄養学的な特性をお話します。

 

 

前回もお話したように、下部尿路疾患の範疇にあたる病気は尿石症、尿道栓子(尿道閉塞症につながります)、特発性膀胱炎がそのほとんどで、そのほかに様々な原因による尿道閉塞症などがあります。

不適切な場所で排尿してしまう疾患はこれに心因性の問題や行動学的な問題が入るので少しニュアンスは異なりますが、そうした疾患にもこの食事は役に立つと思われます。

 

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①マグネシウム、カルシウム、リンを適切なレベルに調整してあります。

ストルバイト結石はリン酸(P)アンモニウム(A)マグネシウム(M)の頭文字からMAPと略されています。シュウ酸カルシウム結石はカルシウム(Ca)の結石です。猫の2大結石を形成させる成分であるMg(マグネシウム)、P(リン)、Ca(カルシウム)といったミネラル分を抑えることで石を形成しにくくなっています。

こんな特性をもつ食事なので、「骨を丈夫にするために煮干しを与えた方がいい」という根拠のない神話を信じて、また「猫にかつおぶしをふりかけないと喜ばない」という妄想からこれらのものを添加していると処方食の特性を失わせるどころか、石を形成させる手助けをしていることになってしまいます。やめてくださいね。

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②尿のpH値が6.2から6.4の間になるように調整されています。

ストルバイト結石はアルカリ性の尿に、またシュウ酸カルシウムの石は産生の尿でできやすくなっていることが研究の結果分かっています。もう少し詳しく言うと、pH6.0以下でシュウ酸カルシウムは形成されやすくなり、6.0から6.4でストルバイト結石は溶解され、6.4から6.6でストルバイト結石が結晶化しにくくなり、7.0以上でストルバイト結石が結晶化します。

内緒でほかのものを与えていると尿のpHはこの範囲から外れてしまいます。「処方食だけを与えています」とVTに伝えても、尿検査の結果が6.2から6.4の間にない場合、ウレアーゼ産生菌の存在よりは食事性の不備であることが多い可能性が高く、もしかして嘘かしら?と食事内容に疑問を持つことが多いです。猫の身体は正直ですから。もし食事を好んで食べない場合は別の選択肢もありますので、「できるだけ食べさせるように努力しています」というのではなく、また「酒のつまみをお相伴しました」というのは遠慮なく言ってもらった方がいいです。

それにしてもわずか0.2の間に入ることができるように調整してあるとは、すごい技術です。以前はもっとおおざっぱにアルカリ尿、酸性尿というカテゴリーで済ませていたのですから驚きの狭さです。職人技と言いたいくらい。

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③クエン酸カリウムを添加してあります。

クエン酸カリウムはシュウ酸カルシウムの結晶化、結石化を阻害する物質です。ですからシュウ酸カルシウム結石が確定した場合も、この薬を処方することはありません。そうでなくても猫さんに投薬するのはたいへんなことですので、これはとてもらくちん。

④ビタミンB6を強化してあります。

ビタミンB6はシュウ酸カルシウムの形成を抑制し、尿中への排泄を減らす働きがあります。普段ビタミンBB1B6B12の合剤になっているものを使います。B群の合剤は神経系の疾患に有効なのでよく使うお薬で、きれいなピンク色をしています。注射薬もピンク色なんです。でも色に似合わず(?)酸っぱいので猫さんには不人気な薬です。この薬も混じっているなんてラッキーです。

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⑤ω3脂肪酸(オメガ3脂肪酸=DHAEPA)を多く配合してあります。

⑥抗酸化成分を多く配合してあります。

DHA(ドコサヘキサエン酸)EPA(エイコサペンタエン酸)などの長鎖オメガ3系多価不飽和脂肪酸やビタミンEなどの抗酸化成分は強力な抗炎症作用があります。このコンビネーションは猫の下部尿路の炎症性疾患だけに推奨されているのではありません。食事からω3脂肪酸を摂取することはさまざまな代謝性、慢性炎症性疾患に罹患した犬、猫だけでなく人にも有効です。高カルシウム尿症、再発性シュウ酸カルシウム尿路結石を持つ人で、ω3脂肪酸の摂取により尿中へのカルシウムやシュウ酸の排泄が有意に減少したという報告もあります。

DHAEPA、抗酸化成分は炎症を抑え、免疫を高めることにも役立っています。サプリメントとして食事とは別に摂取するのもなかなか面倒かと思います。

 

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⑦グリコサミノグリカン(GAGs:ギャグ)を添加してあります。

ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸、グルコサミンがグリコサミノグリカンのよく知られた物質です。変形性関節症のときによく使われるサプリメント、というとお分かりいただけるかもしれません。グリコサミノグリカンは膀胱の表面を覆っている層で、細菌などの外敵から膀胱粘膜を守ったり、尿が下層に浸透するのを防いだりする役目をしています。人の間質性膀胱炎と猫の特発性膀胱炎の特徴が似ていることから、人で有効なこの物質を猫にも応用しています。膀胱粘膜の構成成分であるグリコサミノグリカンを摂取すると膀胱の修復を助けます。

変形性関節症(OA)が不適切な場所での排泄に関与している場合が考えられます。トイレの縁が高く、高齢な猫でこの高さを乗り越えるのが苦痛だという場合、関節のために粗相をしてしまう可能性があるのです。このような場合にもこの処方食は有効です。

 

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⑧トリプトファンを添加してあります。

⑨加水分解ミルクプロテインを添加してあります。

特に特発性膀胱炎(FIC)で問題になるのですが、心のバランスを整えることは大切なことです。FICの治療には不安を解消させる効果のあるフルオキセチンやクロミプラミン、パロキセチンなどの抗うつ薬を使いますが、これらの薬は脳内にセロトニンを増やすよう働きかける薬です。セロトニンは幸せな気分にさせてくれる物質で、不安な気持ちを解消することができます。セロトニンの前駆物質であるアミノ酸のトリプトファンを添加することでセロトニンを増やすことができるため、猫さんはより穏やかな気持ちになれます。

また、加水分解ミルクプロテインは不安症や恐怖症のみられる犬猫に処方するサプリメントです。単独でも高価なので添加してあるなら別に飲ませる手間もないし、好都合です。



<実際に使ってみた感じ>
さて、年末から1月にかけて尿路閉塞症の猫さんが例年になくあったのですが、がちがちの尿石症の猫さんにはいつも通りの溶解食を与え、結晶尿ではあったけれど尿道を閉塞させていた栓子物質が結石ではなかった猫にはこちらの再発防止食を与えてみました。入院させて経過を観察していると、シャーシャーいって抵抗する気配が少なかったのが後者の方でした。

たまたまの猫さんの性格でしょうか、処方食の(トリプトファン
&加水分解ミルクプロテイン)効果でしょうか。いずれにしても、猫さんが穏やかな気持ちで入院生活を送ることができるのもうれしいことです。


以上のような特徴があります。

うちの子にもこれを食べさせよぅ!って思いませんか?処方は簡単。猫さんを診させていただくだけです。オシッコ関連で困っていらっしゃるようでしたら、一日も早く猫さんを排尿のストレスから解放させてあげましょう。 

 

今日は当院おすすめの下部尿路疾患用処方食の特徴についてお話しました。

ちなみに、尿量を増やすためにNaを添加してある処方食、というのを私は好みません。維持食として高Na食を与えられている猫さんでは高血圧と腎臓系のレニンアンギオテンシンアルドステロン系(RAA系)システムに対し何らかの無理を与え、腎臓を守ることができないように思うからです。また前回お話したルーリッチ先生の臨床研究でも、ストルバイト結石を溶解させるのに、この処方食は高Na食よりも早期に溶解させたという結果がでています。

 

 

 

次回はまだお話していなかった特発性膀胱炎について、お伝えしようと思います。 

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猫の下部尿路疾患(FLUTD)と食事

今日お話をしようと思っているのは猫の下部尿路疾患(FLUTDFeline lower urinary tract disease)と食事についてです。

 

<猫の尿石症について歴史的なこと>

病院を開設したのは今から30年ちょっと前のことですが、この頃、猫の下部尿路疾患といえば尿路結石症が中心でした。そして尿路結石もリン酸アンモニウムマグネシウム(ストルバイト)の石が主体でした。ストルバイト尿石が膀胱にできて、砂粒状の細かな石が雄猫の細い尿道を閉塞させてしまう病態(尿道閉塞症)は命にかかわる救急疾患であることは今でも変わりありませんが、寒い冬の日の夜間休日救急診療といえば犬はフィラリアの前大静脈症候群、猫では尿路閉塞症、というくらいこの病気の比率が高かったように思います。雌猫でも尿石症は見られますが、閉塞を起こさないために膀胱炎症状だけで、閉塞症のように派手な症状はなくもっと地味な感じです。今でも猫の尿石症というとストルバイト結石をイメージされる飼い主さんが多いと思います。

 

近年リン酸アンモニウムマグネシウムの石に追いつく勢いで増加傾向にあるのがシュウ酸カルシウム結石です。こちらは膀胱ではなく、腎臓や尿管で発見されることが多い石です。腎臓から尿管へ石が落ちた時に、激しい痛みとそれに続く腎不全兆候で来院されます。性別は関係なく重症な状態で診断されるか、またはほかの目的で検査をしていて偶然見つけられることもあります。ストルバイト結石の猫さんよりも中高齢の年齢の猫さんに多く見られます。

2010年に猫の尿路結石を分析した国内の調査では42.3%がストルバイト結石で、40.4%がシュウ酸カルシウム結石、残りがその他の石になっています。(獣医泌尿器学会誌から)

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<ストルバイト結石症は減少してきた?>

ストルバイトによる尿石症は減少してきているという印象を持っています。当院が救急診療を行わなくなったせいで少なくなってきたのかしらと思っていましたが、北米の獣医科大学付属病院で診断された猫の尿道閉塞症の発生と会陰尿道造瘻術の調査でも1980年から1999年までの20年のうちに猫1000頭当たりの発生頻度が尿道閉塞19.4頭から7.4頭に、手術の方も14.8頭から4.5頭に減少していますので、うちの病院だけではなさそうです。猫のストルバイト結石症についての理解が進み、結晶尿を抑える処方食が普及した効果が表れているのかもしれません。喜ばしいことです。

 

 

なのに今年はなぜかストルバイト尿石症やストルバイトが関連していると思われる尿道栓子による尿路閉塞症の猫さんが多い年です。例年下部尿路疾患は発生しているのですが、特発性膀胱炎(FICFeline idiopathic cystitis)の方が多いです。

 さて、そんなわけで、もう過去の病気になったはずと思っていたストルバイトの尿路結石症ですが、食事で予防が可能な病気なので、もう一度、そこいら辺をお伝えします。

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<下部尿路疾患は食事で予防が可能です>

猫の下部尿路疾患(FLUTDFeline lower urinary tract disease)のうち、尿石症、尿道栓子はストルバイト結石(またはミネラル成分)が関係していて、これには食事管理が有効であることが分かっています。実は今FLUTDとして最も多く見られるのは特発性膀胱炎(FICFeline idiopathic cystitis)ですが、こちらにも食事療法は有効です。そうなると、猫の下部尿路疾患は尿石症であれ、尿道栓子であれ、特発性膀胱炎であれ、食事で予防ができる、という結論になってしまいます。厳密に言うとその他にも病因はあるのですべてのFLUTDに対し予防ができるというわけではありませんが、大半はこの3つが占めるので、相当な割合で食事管理が可能です。またシュウ酸カルシウム結石についても再発を防ぐ食事療法が考慮されています。

 

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<ふたたび歴史的な背景について>

猫に自然発生したストルバイト結石を食事によって溶解させることができたという初めての報告は1983年のことです。

以来、猫のストルバイト尿石症は、猫の尿pHを調整しミネラル分を制限するなどの特徴を持つ処方食により溶解させ、溶けてからは再形成防止の処方食に切り替え石を作らせない、という内科的な方法で管理するのが一般的な方法がとられてきました。別の組成の石や複合結石(ストルバイトだけでなく他のミネラル成分も合わさっている石)の場合は溶解させることができないため、外科手術により治療してきました。

 

このような流れの中で、猫のストルバイト結石症に対しては多くのフード関連研究所で研究され、また専門の先生方により臨床研究もされてきました。

 

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<エビデンスのある最近の研究>

2013年にDr.ルーリッチらがJAVMAに発表した研究をお知らせしましょう。

レントゲン検査で膀胱に結石が見つかった猫37頭の追跡調査です。細かな条件については省略しますが、参加したのは膀胱結石以外の病気が認められておらず、投薬も疼痛緩和のための薬以外は投与されていない猫たち37頭です。

ルーリッチ先生たちは膀胱結石のある猫の一つのグループに溶解食を与え、もうひとつのグループには再発防止食を与え、石が溶けていく様子を調査しました。

すると37頭のうち32頭で石が溶けました。溶解できなかった5頭の猫には手術が行われました。が、外科的に摘出した石を分析すると、どれもストルバイト結石ではありませんでした。

溶解食を与えられたグループでは溶けるのに要した日数は6日から28日、溶けるまでにかかった平均日数は13日(±2.6日)でした。再発防止食を与えられたグループでは、溶解にかかったのは7日から52日で、平均27日(±2.6日)でした。

少々時間がかかっても再発防止食でも十分に溶けることが分かったのです。

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<この研究から>

猫のストルバイト結石は内科的な溶解が有効で外科に比べると安心で費用もかからないという利点があります。

猫に併発した疾患がある場合は早く石を溶かして別の病気のための処方食に切り替えることができます。

はじめから再発防止食を選択すると途中で食事を切り替える必要がありません。また予防食という側面から、同居猫がお相伴しても大丈夫だし、他疾患がなければみんながこの食事を食べてもなんら問題はないでしょう。

 

 

というところで、今回はおしまいです。具体的な商品名はこちらでは控えさせていただきます。尿路閉塞症、尿石症のほか特発性膀胱炎などにかかったことがある猫さんはこの食事に切り替えてもらうと再発が防げてよいと思います。

今はほんとによい食事がありますね。研究者の皆さまに感謝です。

 

この処方食の特性については次回お話します。 

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猫の尿道閉塞症(UO)

 猫の尿道閉塞症(UO)のおはなし

 

12月に入り急に冷え込んできました。寒くなると尿石症関係の猫さんが増えるというのは過去のこと、と思っていたら今週は尿道閉塞症(UO)の猫さんが来ました。今シーズンは尿道閉塞症の猫さんが例年より多いように感じます。

さて今日は尿道閉塞症(
UO)の、ちょっと新しいことについてお話します。

<物理的な閉塞> 
尿道は、おしっこを貯めている膀胱から出口に至るまでのおしっこの通り道です。ここに結石や尿道栓子が詰まったり(他の原因で狭窄が起こったり、腫瘍ができたり)すると尿道は閉塞します。物理的な閉塞です。従来は雄猫で砂状のストルバイト結石が詰まって尿道閉塞を起こし、急性の腎機能不全に陥ってしまうということがよく知られてきました。そしてこれが猫の下部尿路疾患(FLUTD)の大半を占めていた病態です。


<機械的な閉塞> 
今は少し違っています。まず、下部尿路疾患(FLUTD)の中心は尿道結石症から特発性膀胱炎(FIC)になりました。特発性膀胱炎(FIC)はストレスから発症すると考えられています。特発性膀胱炎(FIC)は無菌性の炎症ですが、尿道閉塞症(UO)も根底には特発性膀胱炎(FIC)があるのだろうと考えられています。特発性膀胱炎のことについてはまた後日お話することにします。


<機械的な閉塞をおこす仕組み>
猫にストレスが加わると交感神経系とストレスのときに分泌されるホルモン系のバランスが崩れ、血流に障害が起こります。そして炎症性の物質が放出され、結果的に下部尿路が腫れたり、平滑筋がピクピクしたりして痛みが出てきます。尿道の炎症です。尿道の筋肉が腫れたり痙攣をおこすと、うまく尿を送り出せません。このとき、たまたま膀胱内に結石や栓子のような尿の流れを悪くし排出が困難な物質があると、結果的に尿道で機械的な閉塞を起こすのではないかというのが、特発性膀胱炎(
FIC)に続発して発症する尿道閉塞症(UO)の発生のしくみです。


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今月は尿石症(ストルバイト結石症)について掲示してあります。 

<尿道閉塞が起こると?>
尿道閉塞が起こって困った事態に陥るのは従来の病態と変わりありません。

膀胱内に尿が貯留し、膀胱の内圧が上がり、膀胱の粘膜は圧迫のために傷つき出血します。血尿です。ひどい場合は尿が「血」そのものに思えるくらいの暗い赤色で、ドロドロした感じになります。膀胱内の高まった圧が尿管から腎臓へ伝わります。腎臓内の糸球体のろ過が低下し、尿毒症を発症します。猫はじっと動かなくなり、吐き気を催し、食欲不振になります。その後続いて嘔吐が始まり、飲むことも食べることもできなくなります。さらに悪化してくるとショック状態で低血圧、低体温になり、そのままでは死に至ることもあるくらい重篤になります。

 
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発生の仕組み
を図でわかりやすくしてあります。


<どんな症状がでる?> 
尿道閉塞症(UO)の初期症状は特発性膀胱炎(FIC)とほとんど変わりありません。尿が出ない様子で何度もトイレに通ったり、鳴きながらトイレでいきんでいたりします。本当に出ていないのか、ぽとぽと垂らしているだけなのか、別の場所で漏れてしまっているのか、少量ずつでも排尿しているのか、しっかり確認することが大切です。多頭飼育でひとつのトイレを共有していたり、外にお気に入りの自然のトイレがあるような場合、確認することは簡単ではないかもしれません。しかし特発性膀胱炎(FIC)は待つことができても、尿道閉塞症(UO)は一刻を争う緊急疾患です。完全閉塞を起こし24時間から48時間を経過すると腎臓は全く機能を果たすことができなくなって、猫は急性腎不全で死んでしまいます。

もしおしっこが出ているのかいないのか分からないという時、オス猫で、嘔吐がある、元気が消失している、食事がとれない、水も飲まない、お腹が痛そう、お腹を触ると嫌がったり怒ったりする、下腹部に硬いものを触れる、等の全身状態が現れていれば急いでください。


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食事やその他の注意事項をまとめました。



<動物病院ではどんなことをするの?> 

動物病院では、一般チェックに続いて膀胱に尿が溜まっているのかどうかをレントゲン検査や超音波検査を通して確認します。全身状態の確認のために血液検査をし、尿の状態を知るために尿の検査をします。

膀胱が大きく腫れている時には膀胱に直接針を刺して尿を抜き、膀胱内圧を下げ、腎臓を保護するようにします。その後、物理的な尿道の閉塞を解除することを試みます。外部から圧をかけながら丁寧な操作で特殊な管を挿入します。閉塞が解除できたら皮膚にこの管を縫いつけます。その後、しばらくこの管を通して排尿させます。

血液性状から高カリウム血症などの危険な状態が判明したらこれを是正するための点滴を始めます。

 血管に管が入り点滴が始まり、尿路にも管が通り排尿路が確保されればひと安心、のように思われがちですが、それではまだ危険な状態から脱出できたとは言えません。滞っていた尿が開通すると、そのあと普通以上にたくさんのおしっこが作られるようになり、脱水状態に陥る危険があります。また尿が十分に作られなくなる場合もあります。しばらくは油断のできない状態は続きます。点滴をしながら尿量を監視していきます。

 どうにも閉塞が解除できない場合、または何度も再発が繰り返されるような場合、また先生の方針によって、このような管を通す試みがなされず、肛門の下の部位に新たな尿道口を設ける手術が行われる場合もあります。


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おすすめフードのサンプル、一部ですが掲示しています。



<おうちケアは?>
 全身状態が安定し点滴の管も抜け、排尿の管がなくても自然な状態で十分な排尿があれば、入院治療から家庭でのケアにシフトされます。

必要があれば尿道を弛緩させるお薬や、鎮痛薬、抗生剤などを処方しますので指示通りに服用させてください。

尿道閉塞に結晶尿が関係するかどうか分からない、とする先生もいらっしゃいますが、尿路結石関連の処方食をおすすめしています。この尿結石を溶解させる処方食については後日またお話します。

また飲水量が十分に確保できるよう、水飲み場の整備もお願いします。

ストレスと特発性膀胱炎(FIC)、またそこからの尿道閉塞症(UO)が考えられますから、家庭でも極力ストレスのない生活を送れるよう、同居猫との関係、トイレの問題等、生活環境の見直しをお願いします。生活環境と不適切な排泄についてはこれまで数回にわたりお話してきましたので、そちらも参考になさってください。

 

 

今日のお話はここまでです。

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市販フードと特別療法食

「 処方食は高いんだよね。」と一般食に変更される方もあるのですが、猫のストルバイト結石症はそんな飼い主さんの心を見透かしたように、猫を襲ってきます。

処方食、家計を圧迫するほどに高いのかなぁ。
今日はキャットフードと診療費用について、試算してみました。
単純に1Kgあたりいくらなのか、ということではなく、必要な栄養を摂取できる量を考えての試算です。
体重4.0Kgの去勢済みオス5歳、で考えてみます。巣通の去勢オスよりは少々スリムな体型で設定しました。
避妊去勢済みの体重4.0Kgの猫さんの場合、1日の必要エネルギーは198KCalです。

当院でおすすめしている某社のフード、処方食まではいかないけれど動物病院推奨品です。これは4Kg5880円のものですが1日に66g必要で、1カ月では1980g。値段にすると1カ月で2940円という計算になりました。
一方、ネットで調べた某製品、良く知られた国産メーカーのものを対象商品に選びました。やはり聞いたこともないメーカーだと栄養的に心配がありますので。味の違い、猫さんの好み、そのへんのことはこの際無視してあります。いわゆるグルメ品ではない、けれど信頼できる一般食、という基準で選んであります。で、これですが、某サイトで2.5Kg698円でした。これだと1日に57g食べれば同じだけのエネルギーが得られ、1カ月に必要な量は1710g。これは1カ月で480円の計算です。
片や2940円。これはー!6分の1ですね。勝負にならないくらいの価格差です。
これで、健康が維持できるのならば、それは素晴らしいこと。ぜひ差額分は猫さん預金して、万が一の時のために、回してやってくださいっ!


さて、たいていの飼い主さんって、食事のこととか病院に相談に来ることもなくネットでお買いものするなどして動物病院と疎遠になると、猫に好ましいこと、好ましくないこと、というのを忘れてしまいます。派手な広告に惑わされる、ということもあります。しっかりと名の知れた日本の有名メーカーさんはストルバイト結石に直結するようなフードをつくるわけがないのですが、なぜか一般食にするとストルバイト結石が出来てしまっている。ことがある。おかしいぞ、と思ってうかがってみると、次いで出てきたのが「にぼし」「かつおぶし」です。リン酸アンモニウムマグネシウム結石の成分であるものを高密度に含んだ食品、「にぼし」「かつおぶし」が毎度の食事に登場していることが多くあります。「えっ?だって、ペットのにぼし、カルシウムたっぷり、骨元気!身体にいいんでしょ。」という解釈です。「これを食事に振りかけるとぐーんと喜ぶし、美味しそうに食べるんですよ。」とにこにこ笑顔の飼い主さんもいたりします。つまり、「それ、良くないこと!」という正しい情報が届かないのです。


「ペットのためのにぼし」これを食事に混ぜたらどうなるでしょうか。これも試算に加えましょう。某サイトでは価格が500g798円となっていました。お安いのを探し出しました。2.5Kgフードを消費するのと同じように1.5カ月で1袋消費するとして再度計算を行います。
1カ月480円のフードににぼし代金532円をプラスします。合わせて1カ月1012円です。
こうすると処方食1カ月との差額は1928円になりました。
そうですね。それでも違いは大きいです。
ちなみにこちらの「にぼし」の栄養量は加算しません。ですから4Kgの体重は維持されず、増体傾向になっていきます。


さて、こうして家計費節約して、6カ月を経過したとしましょう。
というか、まぁ、6カ月もするとストルバイト結石が形成されますから、6カ月、にしてみました。(もっと短期間で出来上がってしまう猫さんもいます。)
ここまでで食費の差額は合計で11568円です。
肥満になったことでFLUTDのリスクも高まりました。そしてシーズンはちょうど冬。
頻尿、血尿、排尿痛、残尿感。いよいよ発症です。

このFLUTDの症状から、この猫さんの病気が尿石症なのかFICなのか、それともまさかの膀胱腫瘍?なんていうのを鑑別診断しなくてはいけません。最低限の尿検査と画像診断(超音波検査、X線検査)は必要になるでしょう。さらに症状を鎮めるお薬処方が入ります。とくに問題がないという場合、初診と1回か2回くらいの再診で治癒するでしょう。もちろんこの場合も結石溶解食を始めるべきなので、完全な処方食生活が待っています。万が一、細い尿道を結石が閉鎖させてしまったような場合は開通させるための処置が入るかもしれません。また、閉塞がうまく解除出来なければ外科的な介入も必要になるでしょう。新しい尿道口を設置する手術です。
最も簡単に収まった場合だと、6カ月の差額でおつりがくるかもしれませんが、閉塞してしまうと1回の診察だけで終わってしまいそうですし、手術になれば不足してしまうことは間違いありません。


処方食はある種の病気を治療すること、進行を遅らせること、好ましくない症状を緩和すること、予防すること、再発を防ぐことなどを目的にしてつくられている食事です。食事を工夫するだけで治療になっていたり、予防できるとしたら、嫌がる動物の投薬に苦労しなくてもいいし、何よりも猫さん自身が楽なわけだし、ちょくちょく病院に来てスタッフとも顔なじみになれるし、その間には新しい情報なども仕入れることができるし、結果的に病気になって浮かせたはずの食費が医療費に変わるくらいなら、処方食は動物に掛ける医療保険のようなものなのではないのかしら、と思ったのでした。


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猫の不適切な排尿・4

4回目。

鑑別診断と治療についてお話します。

 

不適切な排尿を示すどの猫にも必要な検査があります。おそらく生理的なものでしょう、といっても、膀胱の病気が陰に潜んでいるかもしれません。そうすると治療を始めてもなかなか症状が改善されないために、つぎの判断が難しくなる場合があります。それで、はじめからきちんと検査をしていくことになります。

 

すべての猫で尿検査は実施されます。しかし、あまりに何度もオシッコを繰り返すために、膀胱の中にオシッコがたまっていない場合があります。そのような場合は、少し時間をずらして、検査を行う場合もあります。

尿検査の内容ですが、尿の性状だけでなく、細胞などの成分についても検査を実施します。

それから膀胱の大きさや粘膜壁の様子などを調べるために、超音波検査やレントゲン検査が実施されることもあります。膀胱に腫瘍ができていたり、結石があったりするのを見つけるために、これらの検査は大変有効な検査です。

 

そして、こうした検査と、お伺いした排泄の状況から総合的に判断し、それぞれの治療方法を決めていきます。

 

1、マーキングとして分類された不適切な排泄の治療

縄張り性スプレー行動は、猫の不安を取り除くのが治療です。落ち着かせることです。抗不安薬の投与、気分を落ち着かせるサプリメント、フェロモン製剤の使用などになります。

過敏になっている飼い主さんが、猫の行動を監視するようにじっと見ていると、これは猫にとっては恐怖になるので不安感を助長してしまい逆効果です。飼い主さんも落ち着いていただくことが不可欠な治療になります。

性的スプレー行動の治療は、去勢手術です。雌猫にもみられる行動であることを付け加えておきます。

 

2、心因性の問題がもとになって生じた不適切な排尿の治療

この場合に処方するお薬は、抗不安薬や抗うつ薬が中心になります。

ただ、そのほかの合併症などもあるので、こうした薬だけでなく、サプリメントやフェロモン等が有効な場合があります。

また、膀胱炎等の病気を併発している場合もありますので、その場合には、膀胱炎のための薬を処方することになります。

 

3、特発性膀胱炎FICの治療

非ステロイド性抗炎症薬、鎮痛消炎剤などに分類されるお薬を第一に選択します。残尿感が強い時は、内臓の筋肉に対してやさしく働きかける鎮痙薬も処方します。

このほか、どのような二次感染があっても症状はスッキリしないので、抗生物質を併用する先生もいらっしゃいます。

こころの問題が強く関与していると思われる場合は抗不安薬や抗うつ薬などを併用することもあります。

 

4、尿石症、尿道栓子の治療

砂粒状の結石が尿道を閉塞しているような場合は、早急に詰まりを取り除かなければいけません。うまく除去できなかったり、繰り返す尿道炎のために狭窄がいちぢるしく、尿道が細くなっていて、改善の見込みがない場合は、尿道を太いところまで切り上げる手術を行う必要があるかもしれません。閉塞のない場合は、食事療法により、できてしまった結石を溶解させるようにします。膀胱炎や尿道炎の治療のために非ステロイド性抗炎症薬の投与をします。場合によっては抗生物質や止血剤の投与が必要なこともあります。

 

まとめです。

猫の不適切な排尿について考えるとき、猫の排尿状況もそうですが、家の中で、また家の外で、その猫がどんな生活をしているのかということは、大変重要な問題です。また同居猫同士の関係、家の中から見えるところに出没する屋外猫との関係、家族、ことに新しく参入してきた別の家族との関係なども診断するうえで、とても貴重な判断材料になります。

こころの問題と身体の問題を総合的に判断する必要があるのです。

そこで、まずしっかり観察していただいている家人に来院していただくこと、生活の中の込み入った状況を包み隠さずお話していただくことなどは大変重要な問題です。

飼い主さんとこころを割ってお話できたら、解決の糸口が早く見つかると思います。ご協力お願いいたします。

テーマ : 動物病院
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ハート動物病院

Author:ハート動物病院
ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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