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胆のうのおしごと

 胆のうのお仕事

胆のうは人間でも犬でも身体の中の重要な部分ですが、犬の身体の中のどこに胆のうがあるのか、それからどんな働きをしているのかを的確に説明することができる飼い主さんは少数で、「胆石ができたことがある」とおっしゃる経験者さんくらいです。

胆のうと胆汁

胆のうは、肝臓でつくられた胆汁を一時的に蓄えておく袋状の臓器です。胆のうは一部が肝臓の窪みに張り付くように位置していて、肝臓から出ている総胆管が十二指腸につながる途中にあります。胆のうは食事をすると胆汁を排泄するために縮みます。

胆汁もまた、多くの人に理解してもらっていない物質なのですが、胆汁は、小腸で消化される脂質を乳化するために重要な消化液です。脂質は水に溶けませんが、表面に水和性の物質をまとわりつかせると溶け込むことができます。(サラダオイルと酢からセパレートのフレンチドレッシングができますが、ここに卵の黄身を加えてしっかりかき回していくと混濁したドレッシングができあがります。黄身の役割が胆汁というわけです。)ただし消化酵素は含んでいません。必要に応じて十二指腸へ放出されます。胆汁の色は緑がかった黄色です。空腹時に犬が嘔吐した液が黄色い状態だと、多くの飼い主さんは「胃液を吐いた」と言いますが、吐物の黄色い色は胆汁の色です。私たちも嘔吐したときに味わった経験があると思います。

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胆のうのトラブルの兆候

胆のうに問題があるときに身体に現れる異常な症状はかなり一般的で、その他の健康状態や主要な臓器に問題が発生したときにも共通するような症状です。なんとなく調子がおかしいというあいまいな兆候を示している場合、何が問題なのかを正確に特定することは困難です。周期的に食欲がなくなるけれど1日絶食にすると翌日は普通に食べられるとか、明け方に黄色の液を吐いている(朝、夜中のうちに吐いていた食物を含んでいない吐物を発見する)が朝ごはんは普通に食べて吐くことはない、というような状況では誰もが見すごしてしまうと思います。状態が悪くなった場合は、黄疸(目の白目の部分が黄色く見える、尿の色が濃いとして気づかれます)、発熱、食欲不振や食物への無関心、けだるい感じ、吐きそう、吐くなどです。

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犬にみられる胆のうのトラブル

犬の胆のうに問題を起こす可能性のある状態は、閉塞性と非閉塞性の2つのカテゴリに分けられます。

非閉塞性の問題というのは、胆嚢から腸への胆汁の排出を妨げていない状態を指します。犬で最も一般的な非閉塞性胆のうの問題は細菌感染症から来る「胆のう炎」です。エコー検査を実施すると胆のうが大きく腫れていて、胆のうの壁が厚くなっているのを見つけることができます。通常、抗菌薬、胆汁の腸への排出を促す薬が投与されます。

犬が怪我をして胆のうが破裂した場合は、深刻な問題が発生します。交通事故による腹部外傷が主な原因です。胆のうが破裂すると、胆嚢から胆汁が腹腔内に漏れ、(腹部の内側を覆い、内臓を保護する組織である腹膜の炎症を引き起こします。腹膜炎は急速に犬の状態を深刻にします。(胆のう破裂のような目に見えない内部のトラブルが起こることがあるので、たとえ外見上問題がないように見えても、交通事故に遭ったら病院にお越しください。)緊急の手術が必要です。

胆のうの閉塞の問題には、胆汁の排泄路が物理的に閉塞したり、胆のう自体が損傷したりして、胆汁が小腸に放出できなくなる状況があります。

慢性的な炎症などの問題により胆のうが腫れ瘢痕化したりすると、胆汁排泄が滞り、時間の経過とともに胆汁が粘稠になり、胆汁の排泄を妨げることがあります。胆のう内部の胆汁の性状により「胆泥症」(たんでいしょう)と、「胆のう粘液のう腫」(ねんえきのうしゅ)、また「胆石症」(たんせき)などに分けられます。胆泥症では排泄障害が発生することはまれですが、胆のう粘液嚢腫は胆汁がプルンプルンのゼリー状で、排泄路の途中で動かなくなり、胆汁が通過できない状況に陥ることがあります。また胆石を形成しているとき、石自体が胆管を塞いで胆汁排泄が滞ってしまうことがあります。こうした排泄路の閉塞問題は犬の状況を悪化させます。過度に濃縮された胆汁が血流に入ると、黄疸につながります。これは犬の消化器系だけにおさまらず、全身の健康状態を混乱させます。

このような場合、閉塞させた粘液様の胆汁や胆石を取り除き、正常な機能を回復するための手術が必要になります。場合によっては、胆のうの切除手術を選択する場合もあります。

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胆のうを守る

脂質を消化する胆汁を生成するには元気な肝臓が必要です。肝酵素値の上昇やエコー検査での異常所見は、身体が高レベルの脂肪を処理する能力が低下しているサインです。今後、手術のお世話になることなく平和な生活を送りたいと希望する場合、食生活を見直す必要があります。脂質がたっぷりの揚げ物やサシの入った肉でなくても、ジャーキーやモイストタイプ(半生)フードには特殊な(構造式がアルコールにそっくりな)物質が含まれています。これはそのまま脂肪肝に結びつきます。脂質の酸化により炎症が発生すると肝組織を治そうとして炎症性細胞が出現し、治癒過程で線維化が進みます。傷跡だらけの肝臓にいつまでも酷な仕事をさせておくわけにはいきません。肝臓とそれに続く胆のうを守るために、低脂肪食を食することをおすすめします。


連日暑い日が続いています。「熱中症=体温上昇」という認識が多いようです。高体温症による「水分と電解質の消失」は急激な脱水症状として救急治療の対象になりますが、気づかれない不感蒸散による「水分と電解質の喪失」もまた、「かくれ熱中症」として身体のだるさや嘔吐、下痢、食欲不振、元気消失などを起こし、補液治療の対象になります。元気な肝臓も、もちろん腎臓をはじめ身体の全組織もたっぷりのお水で守られます。まだまだ暑い日が続くようです。どうぞ、意識してお水を飲ませるよう心がけてください。

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パグ、夏の諸注意

 パグ・夏の諸注意

パグは多くの短頭犬種の一品種ですが、愛嬌のある風貌と性格から、流行に関係なく不動の人気があります。ただし、あらゆる短頭種の犬と一緒で、平らで鼻のつぶれた顔が犬にどのように影響し、問題を引き起こす可能性があるかを知る必要があります。パグ(他のフラットフェイス犬の品種でも共通です)を所有している場合、夏の安全性を保つためには、鼻の長い犬に要求される平均的な注意事項を遙かに超える注意深さが必要です。

短頭症のリスク

夏に特別な注意を必要とするパグの原因の多くは、平らな顔、つまり鼻が短いことです。このようなマズルの形態は、口内の表面積が小さくなり、冷却のための酸素の交換が可能になります。また、鼻孔が狭くなり、口蓋が細長くなります。これらすべてを組み合わせると、空気を十分に取得するのが難しくなります。パグは簡単にヒートアップする傾向があり、過熱すると冷めるのが難しいのも特徴です。暑い天候で運動すると、鼻の長い犬種よりも速く熱が上昇します。

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太りがち

パグの皮膚はだぶだぶしていて、太る余地が有り、実際多くのパグは太りすぎです。ほとんどのパグの飼い主さんは、健康的な体重の犬を特定することができず、代わりに、ちょうど良い体型の犬を「細すぎる」と解釈しがちです。余分な体重を動かすことで犬は過熱しやすくなるし、運動をする危険性が高くなります。犬が過体重になることを許可(または見逃しているかもしれません)し、肥満を解決するための措置を講じないと、健康に影響することが多くなってきます。犬の体重の監視と管理は動物病院が介入した方がうまくいくことが多いです。犬の体重が気になりだしたらすぐに診察にお越しください。

泳ぐことができない

平らなパグの顔が意味するもう1つのことは、この種の犬は通常泳ぐことができないことです。これは、パグの平らな面により、前進を維持しながら鼻孔を水上に保つことができなくなるためです。また同じ運動を維持するのもヒートアップにつながり、この犬では危険です。水源はパグにとって危険になる可能性があることを意味します。清潔な浅い水の中にいて、監視の下では安全に水泳することができますが、散歩途中に池や川がある場合、絶対に目を離してはいけません。
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日よけと水の用意

日陰と新鮮で冷たい水がない状態で犬を放置しないでください。基本的に真夏の屋外飼育はパグにとって危険が高すぎます。けれど屋内だからといって全く安心だということもありません。犬が1つの部屋またはクレートに閉じ込められている場合は、太陽の動きによっては、「涼しく日陰がある」という条件に合致しない時間帯もあるかもしれません。犬が屋内にいても屋外にいても、常に自由に動いて涼しい場所を選び、水を手に入れられるようにする必要があります。エアコンは昼夜問わず必須です。

夏の運動

犬は夏でも運動する必要があります。過熱リスクを減らすために一日の涼しい時間帯で行うようにしてください。とにかく暑いときはほとんどの犬は歩きたくないので、早朝と深夜に外に出して、苦労したり暑すぎたりする兆候がないか常に注意深く監視します。
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熱い舗装

すべてのタイプの犬に対して見落とされがちなことは、高温の舗装が犬の足を火傷させる可能性です。飼い主さんにも気付かれないくらい速効発生する可能性があります。靴下を脱いで舗装が熱すぎないかどうか確認してください。裸足で止まっていられないくらい熱い場合は、犬の足にも熱すぎます。犬を散歩する時間帯と場所の両方を見直してください。熱せられた地面による火傷の危険性は、草地やその他の涼しい場所に犬を連れて行くことで回避できます。

冷却パック

犬用に様々なクーリング用アクセサリーが販売されています。気象条件に関係なく犬の中心部の温度を下げることができて、夏でも涼しさを維持することもできます。氷のパックを保持したり、水に浸して犬の体に着用するように設計された冷却ベストやジャケットです。とても効果的ですが、使用上の注意をよく読んで管理しながら使ってください。いつの間にか乾燥していたり冷却効果がなくなったりして、余計に暑くなってしまうことがあります。

というわけで、今日はパグの日。でもパグじゃなくても夏の注意は共通です。日本では7月23日頃の「大暑」から8月23日頃の「処暑」までが「本格的な暑さの季節」です。ヨーロッパでもおおいぬ座のシリウスが太陽と同じ方向に現れるこの期間を「ドッグデイズ」として、猛暑のために体調を崩し病気になりやすい季節として注意しているそうです。もうしばらく暑い日が続きますが、熱中症にはくれぐれもご注意ください。
もうひとつ!パグ好きさんにはお誕生日の次くらいにお祝いしたい日だと思いますが、健康的にお祝いしてください!

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犬の咳の原因は?

犬の咳
 健康な犬が時折する咳は通常心配する必要はありません。けれど、犬の咳が絶え間なく出るとかまたは繰り返し発生するときは病気の兆候でかもしれません。犬が咳をするときに考えられる病気を挙げてみました。(犬と猫では病気も異なりますので、これは猫の咳には当てはまりません。)
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1,感染症に関連する咳

ウイルス、細菌(まれに真菌や寄生虫)はすべて、犬の上部気道(鼻やのど、気管)と下部気道(気管支や肺)、または両方に感染し、犬に咳を引き起こさせます。「ケンネルコフ」は犬に見られる咳の最も一般的な感染性の原因です。ケンネルコフは、いくつかの異なるウイルスや細菌の組み合わせ(アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、ボルデテラ菌など)で引き起こされます。近年、犬インフルエンザウイルスによる気道感染症が米国で蔓延しています。(咳、発熱、鼻汁などの症状を引き起こします。)ペットショップから購入したばかりの子犬に発生することがあります。成犬や高齢犬にはまれです。
治療)
感染症によって引き起こされる咳の治療の重要な部分は支持療法です。咳が出ることそれ自体で体力を消耗するので、休息し、栄養を摂取し、しっかり水を飲むことを奨励します。咳止めの薬は、特に重篤な症状の治療に役立ちます。抗生物質は細菌に対してのみ有効です。ウイルス感染症は、一般的にその経過をたどるしかありません。
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2,糸状虫病に関連する咳

糸状虫(犬フィラリア)は感染した犬から蚊が血を吸うときにいっしょにミクロフィラリアを吸い取り、それを別の犬に渡して感染を広げます。感染した犬の心臓や肺動脈に感染子虫が移行すると、犬の体内でスパゲッティのような成熟虫に成長します。成虫がいることと、その結果として生じる炎症は、致命的な心臓と肺の損傷につながります。フィラリア症でも咳が出ます。フィラリア予防をされていない犬、不完全であった犬に発生します。
治療)
フィラリア症が発症したとき、治療は複雑で費用がかかります。フィラリア症も、フィラリア症の治療そのものも、非常に危険な場合があります。それに比べるとフィラリア予防は非常に安全で、安価で、かつ効果的です。

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3,心臓病に関連する咳

僧帽弁閉鎖不全症や拡張型心筋症、そのほか複数の原因によるうっ血性心不全など、さまざまな心臓病が犬に咳を引き起こす可能性があります。先天性の場合は子犬でもおこり、成犬や中年でも発生はあり、高齢犬に最も発生は多いです。
治療)
犬がかかっている心臓病の種類や、血行動態、どれだけシビアな状態かどうかに応じて、心臓を効率的に動かし、体液の異常な蓄積(腹水など)を減らすための薬をいくつか組み合わせて処方します。(末梢血管を広げる薬、強心薬、利尿薬、そのほかです)

4,気管虚脱に関連する咳

小型犬は、気管を(部分的に)取り囲む軟骨輪が弱まるリスクが高く、これにより断面が丸いはずの気管が扁平につぶれ、ガチョウの鳴き声のように聞こえる慢性的な咳が発生します。年齢に無関係に発生します。よく吠える犬にありがちです。
治療)
気道を広げ、炎症を軽減し、咳を抑え、二次感染を治療する薬を使います。けれど重症の場合は、犬の生活の質を許せる範囲まで良い状態にするために手術が必要になることがあります。

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5,喉頭麻痺に関連する咳

喉頭麻痺がある犬は、のどの周囲の筋肉を制御する神経が弱くなっているため、気道(のど)への通路を完全に開くことができません。咳のほか、騒々しい呼吸や息切れにつながります。軟口蓋過長症は犬の咳のもう1つの原因です。鼻ぺちゃの犬種の犬に発生が多いです。
治療)
喉頭の片側を永久に開いたままにする手術は、喉頭麻痺のある犬の呼吸を緩和するのに役立ちますが、誤嚥性肺炎を発症するリスクも高くなります。

6,くしゃみを逆にする

本来は咳ではありませんが、多くの犬の飼い主さんが逆くしゃみの音を咳と間違えます。逆くしゃみは鼻腔みずや異物などが鼻の奥の方の背部を刺激すると発生します。年齢、性別、犬種に関係なく発生があります。
治療)
通常のくしゃみのように、逆くしゃみは心配する必要はありません。

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7,慢性気管支炎に関連する咳

犬が慢性的に咳をしていて他に原因が特定できない場合は、「慢性気管支炎」が最も可能性の高い診断になります。慢性気管支炎の犬は、乾いた咳を出します。咳は運動や興奮で悪化し、時間とともに悪化する傾向があります。成犬から高齢犬に発生が多いです。
治療)
炎症を軽減する薬(ステロイドの薬を多用します)や抗アレルギー薬を使います。気道を拡げる薬を併用することもあります。理想的には、潜在的な副作用を減らすために吸入療法が望ましいのですが、ほとんどは内服による全身投与になります。

8,異物に関連する咳

時々犬は異物や気道に留まる物体を吸い込みます。体の自然な反応は、咳をすることです。すべての年齢の犬に発生する可能性があります。急な発症があります。
治療)
咳をしても異物を排除することができなかった場合は、内視鏡を使用するか、手術で異物を除去しなければいけません。

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9,腫瘍に関連する咳

犬の肺や他の気道部分、心臓やその周囲組織に腫瘍ができたときに、飼い主さんが気づく最初の症状は咳です。高齢犬を中心に、成犬でも発生はあります。
治療)
肺や心臓の一部分に腫瘍ができたとき、手術で取り除くことができるのは非常にラッキーな状態で切除可能な位置に限局的に発生した場合に限られます。そのほかの治療としては、化学療法、緩和療法があります。

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犬の咳の原因の診断

犬の咳を治療する最初のステップは、原因を解明することです。あなたの犬の健康歴、予防的ケア、症状の発症と進行などについて質問することから診断を開始します。身体検査までの時点で暫定的な診断に到達できる場合もありますが、多くの場合、次のような検査を組み合わせて確定診断を得ます。

  • 血液検査(血球検査と血液化学検査)
  • フィラリア症の免疫学的検査
  •  心臓病を疑うときの追加血液検査(ナトリウム利尿ペプチド)
  • 尿検査
  • 胸部レントゲン検査
  • 心エコー検査(心臓の超音波検査)
  • 血圧の測定
  • 心電図検査
  • 気道から採取されたサンプルの検査

咳が深刻?

「最近軽度の咳をした」場合、数日間、解消するかどうか待ってみるのも妥当なことかもしれません。ただ、咳がひどいとか、悪化する場合、または1週間ほど経過しても改善しない場合は、病院にいらしてください。さらに犬に力が無い、一生懸命呼吸をしている、食べ物に興味がない、その他にも深刻な症状がある場合は、すぐに診察を受けなければいけません。

1日遅れになりましたが、8月1日は「肺の日」でした。もし、愛犬が咳をしていて気になったときには、ぜひ診察にいらしてください。軽いことなら簡単なサプリメントやお薬で治せることもあるし、悪い腫瘍がある場合は次の手立てを考えましょう。

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総胆汁酸(TBA)の検査

総胆汁酸値(TBA)の検査

総胆汁酸の検査は、犬の肝機能を調べる検査です。総胆汁酸値が通常の基準範囲外のときには、病気の可能性があります。肝酵素の検査が肝臓の損傷や炎症を特定するのに対し、総胆汁酸の検査は犬の肝臓が正常に機能しているかどうかをみる検査です。

胆汁は肝細胞で産生される消化液で、肝内胆管を通り胆嚢で貯留されます。それから食物を消化するときに十二指腸に排出され、脂肪を分解するように働きますが、腸管内での仕事が終わると腸壁から再吸収(再び血液の中に入る)されて肝臓に戻ります。そして肝臓に帰ってきた血液から肝細胞が胆汁酸を取り除き胆嚢に送り返し、このサイクルが再開します。(腸肝循環といいます)

犬の肝細胞が損傷しているか、または適切に機能できない場合、肝臓は血液中に蓄積された胆汁酸を効率よく除去できないため胆汁酸は血流にとどまります。血中の高濃度の胆汁酸を特定することは、犬の潜在的な肝臓の問題を特定するのに効果的な方法で、総胆汁酸値の上昇は、膵炎やクッシング症候群、肝臓のがんなどさまざまな健康上の問題を示唆します。また、肝臓に関連する血管異常やそれによる問題を早期に特定し、疾患が悪化する前に管理できるようにするため、総胆汁酸の検査は子犬に対して実行する場合にも役立ちます。同時にアンモニア値(NH3)を測定することもあります。

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検査の必要性

肝臓を含めた消化器系の症状は、これらの症状が出る原因を特定するのが難しい場合があります。それは同一の病気でも犬によって症状が大きく異なるし、またさまざまな疾患で普通に見られるような症状であるためです。

子犬の成長が良くない、若年期から体調が優れないと思われる場合、肝微小血管異形成症(PHPV)のリスクが他の犬種よりも高い可能性があるテリア種やチワワ、トイプードル、カニヘンダックスと、それらの品種のミックス犬などのごく小さな犬たちにも、幅広い検査パネルの一部として胆汁酸検査を実施する場合があります。

検査の方法

完全な総胆汁酸値を検査するためには、空腹時と満腹後の2回の採血が必要になります。空腹状態(早めに夕食を済ませた翌日の午前)に病院に来て血液を採取します。それから脂肪の多い食事を食べさせ2時間経過したころに、食後のデータとして再度血液を採取します。院内で食事を食べることができれば、2回目の採血が終わると犬は帰宅できます。もし病院内では緊張して食事が摂取できない場合は、帰宅後食事を済ませ再度来院して2回目の採血をします。

食前と食後の2つの血液サンプルの総胆汁酸値を比較します。血中の総胆汁酸値が通常よりも高いことが判明した場合は、肝臓の問題を示している可能性があります。
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検査結果の解釈

健康な犬では脂肪の消化を助けるため、一度消化に使われた胆汁酸を肝臓で血液から再吸収しますが、肝臓に問題があってこの役割を適切に果たさない場合は、食後の血中総胆汁酸値は高いままです。一般的に食後の高い総胆汁酸値は問題を示していますが、より深刻な病態の犬の場合空腹時の総胆汁酸値も異常に高い場合があります。ただし、複数の検査を実施すると、同じ個体でも空腹時よりも食後の結果値が低く出たり、常にボーダーライン上で決定的な高値を示すことがなかったりする場合があります。

わたしたちが犬の総胆汁酸値が異常に高い場合に懸念するのは、「門脈体循環シャント」(Portosystemic shunts : PSS)(「門脈体循環シャント」は単に「門脈シャント」と略して呼ばれることもあります。)の存在です。これは血管の奇形です。総胆汁酸値の検査は「門脈体循環シャント」を診断するのではなく、シャント状態の可能性を診断しています。腸管から流れてくる栄養をたっぷり含んだ血管(門脈)と身体を循環している血管(体循環)は、本来結合することはありません。門脈は一度肝臓内に入り、肝臓内で必要な栄養素の再合成や貯蓄、意図せず入ってきた毒素などの無毒化などの仕事を行ない、全身に回っても問題がない血液に変えて体循環に合流する仕組みになっています。末梢血管から血液を採取する場合、(頸静脈から採取しても、腕から採取しても、下肢から採取してもすべては)体循環系なので、腸管から戻ってくる総胆汁酸が高濃度に存在しているはずがありません。もし総胆汁酸値が高ければ、体循環にある血液に門脈系の血液が混入している可能性があります。

それから機能不全の肝臓が原因で総胆汁酸の上昇が発生する可能性があります。それがもう一つの懸念である「肝臓内の血管異常」(原発性門脈低形成 Primary hypoplasia of the portalvein : PHPV)(肝微小血管低形成と言うこともあります)です。消化後の胆汁酸を多く含んだ門脈系の血液と一般の静脈系の血液が肝臓内で相互に交流を持つために、総胆汁酸値が上昇します。「肝微小血管低形成」でも肝臓は十分に発達がないため「小肝症」と呼ばれるやや小さな肝臓をしています。ケアンテリア、ヨークシャテリアをはじめ、ミニテチュアシュナウザーやマルチーズなどで発生がよく見られます。

注)「門脈シャント」は、高度な技術者による腹部エコー検査で疑いが濃厚になり、麻酔下血管造影CT検査で確定診断になります。一般に先天性の「門脈シャント」は肝臓の十分な発達がないために小さな肝臓をしていることが多いです(小肝症)。肝硬変などの重篤な肝臓病の影響で数本以上の血管が形成される「後天性の門脈シャント」が発生することもあります。
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治療

肝血管の異常から数値が高まっているとしても、肝機能低下症は徐々に進行し肝不全に発展してしまう可能性があります。手術で閉鎖が可能な太さの血管がバイパスしている場合は手術で血管を閉じていきます。「肝性脳症」は肝臓で解毒されなければならない有毒物質が体循環に乗って脳へ達し、神経症状を発生する病態です。激しいけいれんや意識障害ほどではないにしても、性格が変化したり、身体が震えたりよろけたり、行動上の変化が見られます。肝性脳症を防ぐために、肝臓疾患用の特別療法食を利用することができます。また肝保護薬や有毒物質(アンモニアなど)の発生を防ぐ薬や、肝臓を機能的に働かせる必須アミノ酸(サプリメントとして摂取可能)を使うことができます。

7月28日は「世界肝炎デー」です。ふだん、肝臓の検査というと、GOT、GPT(ALT、AST)、ALPなど、肝酵素が主で、総胆汁酸の検査はなじみのない検査かと思います。特殊な血管異常を見つけるための検査項目ですが、青年期の避妊手術前のスクリーニング検査に(主に小型犬種向け)、総胆汁酸値も加えることにしました。肝臓の発達が不十分ではないかどうかを調べ、できれば早期に門脈シャントや門脈低形成を発見していく目的です。







 

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散歩の利点2

ロコモ予防のためのお散歩について先週からお話ししています。 

<散歩はからだの健康に役立つ>

散歩は身体の健康を維持するのにとても良いことです。身体を健康で活発に保つことができます。

運動器系(骨や関節、筋肉や腱、靱帯、神経など)は一番恩恵を受ける器官でしょう。トレーニングしているようなものです。ついでに体重管理にも役立ちます。

身体を動かすと心臓や血管などの循環器系にも、呼吸器系にも良い効果があります。運動すると血の巡りが良くなります。酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す、肺の働きも活発になります。

そして排便を促し、食欲をそそるため、胃腸の運動も良くなります。便秘の解消にもなります。ですから消化器系にも良いのです。 

<こころの健康に役立つ>

そしてこころの健康にも役立ちます。穴掘り行動、引っ掻き行動などの破壊的な問題行動を無くすのに大変有効です。犬は子供のような存在で、退屈すると体力を持て余してしまい、動きたくて仕方がなくなります。むやみやたらと人に飛びついてくるのもエネルギーが溜まっている徴候です。有り余るエネルギーを消費するために散歩は好都合な運動です。

注意を引こうとする行動も散歩によって減少します。ワンワン鳴いて人を呼ぶ行動や、いわゆる何に向かっても吠え出す無駄吠えなど、犬が家族に注意を向けて欲しいことを示しています。定期的に歩いていると犬は満足し、これらの行動を起こさなくなります。十分な運動を得られた犬はこのような多動性や興奮症などを見せなくなり、リラックスして夜もすぐに就寝に付くことができるでしょう。

<絆が深まり自信が付く>

犬と一緒の時間を過ごすということは、デイリーなグルーミングや歯みがきなどのケアと一緒で、犬は飼い主さんが自分のために時間を割いてくれていることを十分理解できますので、とても高い信頼関係を築くことができます。

少々シャイな犬は、散歩を好まないことが多いです。「外は怖い、うちの中なら安全」というように学習してしまうのです。けれど、定期的な散歩で飼い主さんに信頼感を寄せた犬は、自分に自信を持つようになります。こわがりさんも社交的になれます。お散歩仲間の犬と仲良くできたり、ママ友さんに撫でてもらったり抱っこしてもらったりというようなことができるようになります。「内弁慶で~」という犬こそ、散歩に出ていってもらいだいと思います。

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<散歩で注意すること>

    散歩の前に

お散歩前に身体のウォーミングアップができると急な筋肉疲労を起こすことがありません。特に高齢の犬では指先から順に身体の近くの筋肉へ向かって、もみほぐしたりマッサージするなどして準備運動をしてあげると寝ていてこわばった関節や筋肉をほぐすことができるのでおすすめです。

散歩前は、特に胸の深い大型犬ではよく知られている「胃拡張捻転症候群」を引き起こすことがあるため、空腹で出かけてください。お腹が空いていると拾い食いが心配だという場合、リードの引き方が違っているために発生するトラブルです。散歩法を変えると拾い食いは修正が可能です。

ペットボトルにお水を、携帯用のボウルを、そしてウンチをとるビニール袋などの用具を持って出かけてください。万が一に備えて、家族に連絡ができるスマホも持っていきましょう。クリッカーやしつけに使うフード(またはにんじんのサイコロカットなどのおやつ)、おもちゃなどを持って出かけるのもおすすめです。荷物が多くなりすぎるので注意ください。

    散歩の途中で

散歩中に、息がハァハァ、荒くなってきたときにはクールダウンさせるために水を飲ませてあげたいです。

止まって欲しい交差点まできたら、必ずクリッカーを鳴らし関心を散歩者に向けさせます。目が合いストップできたらおやつ(またはフード)をごほうびとして与えます。

休憩場所まで行ったら、おもちゃで遊んでもいいし、「座れ」「立て」を繰り返すスクワットなどの体操をしながらおやつを与えるのもいいと思います。

排泄した場合は周りの方の迷惑にならないように片付けましょう。オシッコのところも水で流してください。

危険がないように監視してください。散歩中は犬から目をそらさないようにしましょう。

    散歩の後で

帰宅後は足の裏のチェックを兼ねて、足を拭いてあげます。落ち着いていないときは、おもちゃなどで関心をそらすようにします。(寒いところを歩いてきた犬にはパットにワセリンなどのクリームを塗り、パットを保護することも考えてください。)

また筋肉のクールダウンのために、マッサージをします。

  帰宅したらお水を与えます。落ち着いたところで食事も与えます。

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<お散歩を楽しくするヒント>

    わくわくさせる

お散歩の基本の歩き方ができるようになってからですが、ときには犬が行きたい道を選ばせたり、本能である「クンクン」をさせてあげるのもいいです。たいていの飼い主さんはこちらの歩き方を主にしています。これが正しい方法ではないけれども、全否定ではなく、犬が喜ぶのならこういう散歩もいいです。ただし、この歩き方をさせると途端に拾い食いをしてしまう犬ではおすすめではありません。

新しい散歩ルートを開拓するのも犬はわくわくします。

車で出かけていって、いつもと違う公園の周りを歩くのも変化があって楽しいでしょう。これは休日に限るかもしれません。

    バラエティ豊かにする

歩くペースを途中で変えて、「行くよ!」と声をかけてから小走りに走るのも変化があって犬は楽しくなります。休憩地に行ってから遊びを取り入れます。おもちゃでもいいし、筋トレでもいいです。

散歩途中で家族の誰かとパートナーチェンジすると犬は驚くかもしれませんが、家を出るときはお母さんと行ったのに、途中でお父さんが待っていてくれたら気分は上がります。家族とグループウォークするのもいいです。

    犬との散歩を楽しむ

あまり人がいないところだったら、鼻歌を歌うもよし、休憩地で犬を後ろ足立ちさせてダンシングするもよしです。犬を追いかけたり、犬に追いかけさせたりという追いかけっこもいいです。

ゆったり歩いた後で、マットを引いて犬のヨガ、ドガで筋肉マッサージなどを行なうのも天気の良い日でしたらいいと思います。

    減量のための散歩

体重管理のための散歩はやはり成果が出ないと楽しくないです。運動だけで減量するのは難しいので、おやつカットや療法食、サプリメントなどと併用した方が短期間で効果が見えてきます。長期戦ではあるけれども、まず6%ほど体重が落ちるまでを目標にがんばってください。この数値を切ってくると、犬の動きに変化があるという報告があります。犬が軽やかな動きに変わってきて、自主的に動くようになるようです。

 

<さんぽは雑用ではない!>

ということで、「散歩は飼い主の義務、しなくちゃいけない雑用の一つ」という呪縛から「いいことずくめのお散歩」に考えを変えていただくことができたでしょうか。犬の散歩は雑用ではありません。犬にはもちろんですが、散歩に連れ出す飼い主さんの健康にも有益です。

犬の個性も、家族のライフスタイルもいろいろでしょうが、マイドッグランを持つ贅沢わんこにも、健康と社交性をもたらす散歩はおすすめです。犬は見返りを求めない素晴らしいパートナーです。裏切りもありません。お散歩中は楽しく、彼らに集中して絆を深めてください。

 

最後にまとめです!

<お散歩のNG>

    リードが短すぎる

50cm程度の短い紐はお散歩向きではありません。動きが制限されすぎて犬が楽しめません。

    クンクンなしの速歩

あっという間にお散歩タイムが過ぎてしまい、犬は他動的に動かされているだけの印象を受けると思います。

    自由にさせすぎる

危険です。この方法をよく見かけます。

    電話をかける、話に夢中になる

これも危険です。ハンズフリーでも会話に集中し、犬の方に関心が向かなくなるため、やめてください。電話をするのは犬とご自身の緊急時だけです。

    使い古したリード

これも危険です。

    変化のない散歩

いつもと変わらない道をいつもの時間にいつものようにたらたら歩くのはつまらないです。

コロナさえなければ今週にはオリンピックが始まっていたのかと思うととても残念です。今年は運動器疾患をメインテーマにちょこちょこお話しする予定でした。先週と今週は最も身近な運動である「散歩」に焦点を当ててお話ししました。「うちの子はお散歩が嫌い」というのをお聞きするととても残念です。引きこもりっ子をなくし、お散歩好きのわんこに育って行って欲しいです。 

テーマ : 動物病院
ジャンル : ペット

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ハート動物病院です。
〒445-0062
愛知県西尾市丁田町杢左51-3
TEL/0563-57-4111
オフィシャルサイト:http://www.heart-ah.com/

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